
2024.6.12
こくごレポート
学年が上がってもなかなか定着しきらない特殊音節の表記。促音(小さい「っ」)の最初の学習で、東京書籍の教科書の特徴の一つであるMIMを取り入れた授業を行うことで、子どもたちにどのくらい定着するのでしょうか…? 授業見学に伺いました!
MIMとは、Multilayer Instruction Modelの略。「多層指導モデル」という意味です。…何やら難しそうですが、特別支援教育の知見を活かして開発されたもので、子どもの実態把握と効果的な授業を両輪とした指導法です。
記号(
など)による視覚化と、手を握ったり叩いたりする動作化により、多感覚に働きかけることで、音節の仕組みの理解と、正しく読んだり書いたりすることができるようになることを目指しています。
子どもがつまずいてから支援するのではなく、つまずく前に、すべての子どもに効果的な指導を用いることによって、子どもたちに「自分はできない」「分からない」という思いを持たせず、これからの学習に臨める仕組みです。
今回は練馬区立下石神井小学校にお邪魔しました! こくごスタジオにも何度か登場してくださっている、栗原光世先生がいらっしゃる学校です。
建て替えられたばかりの新しい校舎でした。
まず、3時間目は1年1組へ。
ご指導されているのは担任の髙橋菜央(たかはしなお)先生。「とっても元気な子たちが多いクラスです!」とおっしゃるように、元気よく手が挙がります!
授業の導入は既習の濁音について、単元名の「ことばのたつじん」を使って確認するところから。先生はわざと黒板に「ことばのたつしん」と書いて、子どもたちの気づきを促します。
十分に子どもたちが盛り上がったところで、いよいよ「ねこ」と「ねっこ」の違いを比べていきます。
桜の木の陰から猫が現れました。子どもたちは大喜び! こうした小さな工夫で、子どもたちの心をつかんで授業を進めていくんですね。
「『ねこ』と『ねっこ』は何が違うかな?」と先生が聞くと、子どもたちから「離れてる」「つながってない」「はねてる」などの声が上がります。
ここからがMIMの「視覚化」と「動作化」の出番。清音を大きな
、促音を小さな
で表し、「ねこ」を「ねっこ」にするには、小さな
をどこに入れればよいか子どもたちに投げかけます。
このときも髙橋先生は「私はロボットです。上から小さい
を落とすから、ちょうどいいところでストップって言ってね。」と声かけ。子どもたちは真剣に「ストップ!」「違うよ!」と取り組んでいます。
正しい位置に「小さい
」が入ったら、今度は手を叩いたり握ったりする動作化で確かめます。
その後、促音の付く言葉集めを行い、それも動作化で確かめた後、各自、ワークシートに見つけた言葉を書く活動に入りました。
机間指導をしながらも先生は子どもが見つけた言葉に花丸をつけたり、促音の位置が分からない子にはいっしょに動作化で確認したり。すると、「がこっう」と書いていた子も、手を叩く動作によって「(「っ」の)場所が違う!」と気づいて、正しく書き直していました。
視覚化・動作化を取り入れることによって、子どもたちが主体的に楽しく理解できることを実感しました!
余談ですが、いろいろな子の活動を観察していたところ、ワークシートに入れる言葉が分からず困っている子がいました。前の席の友達が教えてくれたのですが、すかさず「教えてくれてありがとう。」とお礼を言っており、「なんていいクラスなんだ…!」と感動してしまいました。
続いて4時間目は1年4組へ。
ご指導されているのは担任の黒田和秀(くろだかずひで)先生。こちらのクラスは姿勢よく先生の話を聞いている子が多く、発言の反応も早い!
実は、事前に栗原先生が別のクラスで一度本時の授業を見せてくださったそうで、黒田先生も先ほどの髙橋先生も、その授業の流れを参考にしたそうです。
しかし、子どもたちの反応はもちろんのこと、カードを出すタイミングや先生の問いの出し方もクラスによって違う!
当たり前のことかもしれませんが、クラスの子どもたちの実態や反応に合わせて先生方が瞬時に判断して対応しているということに驚きましたし、授業は生きているということも改めて感じました。
こちらのクラスでは、先生が促音の部分を「音楽でやった『うん(休符)』と似ているね。」と伝えていたり、促音を入れる位置を「前から◯番目に入れるんだよ!」と、算数で学習した用語を使って説明したりしている子がいたりと、他教科での学びを生かした言葉が印象的でした。
Q 今日の授業では、子どもたちの反応はいかがでしたか。
手を叩いたり握ったりする動きと、発音する音を一致させたい思いが強かったですね。集中して確かめながらできていました。
Q 子どもたちの様子を見ながら、工夫されたところなどはありますか。
授業をする前は、言葉集めのときは動作化をせずに言葉をどんどん出してもらおうと計画していました。でも実際に子どもたちの様子を見て、本時が促音学習の第1時ということもあり、一つ一つの言葉を丁寧に押さえたほうがよさそうだと思い、言葉を挙げてもらうたびに動作化させることにしました。子どもたちがノリノリで動作化していたから、というのもあります(笑)。
Q なるほど。臨機応変に授業の内容を組み立てていたんですね! もし子どもたちが飽きている様子が見られたらどう対応しようとお考えでしたか?
「パイナップル」のような、長い言葉を挙げて動作化させてみようかと考えていました。おそらく間違わずに動作化するのは難しいので、子どもたちが試行錯誤しながら確認したのではないかと思います。
Q 「動作化」は大人でもたまに混乱することがあります(笑)。
栗原先生の授業を見ていたので、自分もイメージを膨らませて授業に臨みましたが、実際に挙げられた語彙に対して、動作化で叩いたり握ったりしてみたら意外と難しかったです(笑)。もう少し練習しておくべきでした。
Q 分かります! そのことに関連して、今日の活動を拝見したとき、「正しい表記で書けているけど、叩くのが間違っている」「書いたときに促音の位置が間違っている」という子も見られました。この後、どのようなご指導をされますか?
表記が合っていれば、音節の仕組みは理解できているので、動作化を間違えていても焦る必要はありません。一方で、「がこっう」など、促音の位置が違っているケースは支援が必要です。まずは「自分で叩いてから書いてみよう。」と声かけをします。ただ、平仮名がまだ全部書けないため、そこでつまずいている可能性もあります。マスの横に大小の丸を書いてあげてから語彙を書かせるのも効果的だと思います。
Q 最後の質問です。お二人は1年生担任は複数回ご経験されているそうですが、MIMの指導法を取り入れた授業は初めてと伺いました。まだ初回ではありますが、どのような感想を持たれましたか。
実は昨年栗原先生が1年生にこの授業をしているのを見て、とっても楽しそうだと思っていたので、今年度、1年生で授業ができて嬉しいです! これから子どもたちにはぜひ定着させていきたいと思っています。どうしても繰り返しやらないと定着しない子もいますが、楽しんで取り組めそうなのがよいですね。
これまでは聴覚と感覚に頼った授業をしていたなと思います。MIMを使うと、聞いて、見て、叩いて、書くというステップを、子どもが楽しみながら学べますし、つまずいたときに戻ってこられるのがよいなと思いました。
みなさん、MIMの授業レポートはいかがでしたか? 1年生に限らず、特殊音節や助詞の使い方につまずきが見られる場合、ぜひ試してみていただけたらと思います。
今回のこくごレポートはこれでおしまいです。
次回は先生の学校にお邪魔するかも!?
それではお楽しみに!!
(取材日:2024年5月)