これからの「書くこと」を考える 第3回 子どもに寄り添う「評価」

2023.9.20

これからの「書くこと」を考える

第3回 子どもに寄り添う「評価」

横田経一郎(植草学園大学教授)

先生方の研究会で評価の質問をよく受けます。評価について話してほしいという依頼もよく受けます。

しかし、多くの場合、「評価」と「評定」が混沌としていることが少なくありません。

粗くいえば、「評価」は育てるためにあり、「評定」は品定めのためにあります。だから、教育で重視しなければならないのは、「評定」でなく「評価」です。品定めをする「評定」は二の次です。

中央教育審議会「幼稚園、小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善及び必要な方策等について(答申)」 では「学習の成果を的確に捉え、教員が指導の改善を図るとともに、子供たち自身が自らの学びを振り返って次の学びに向かうことができるようにするためには、この学習評価の在り方が極めて重要」(p.60)であると唱えられ、その具体像は「学習指導要領」や「学習評価のハンドブック」などに反映されています。

この答申にも示されている、評価の二つの機能を具現化することが重要です。

①教師が指導の改善を図るための評価

②児童生徒が自らの学びを振り返って次の学びに向かうことができるための評価

だから、「評価」のために、教師は子どもにもっともっと寄り添わなければいけません。全ての児童が学習のゴールに向かって学び浸るための足場づくりを、全力で行う必要があるのです。

そのためには、個々の児童の困り感を捉え、その児童が見通した学習のゴールを迎えるように最大限の支援をする必要があります。「書くこと」の学習の例を挙げれば、鉛筆が止まっている子に寄り添い、その子の想いが鮮明になるような助言をする必要があります。

全く書けない子がいたら、モデルとなるような文章を教師が薄く書き、なぞらせることだって支援の一つです。何も書けずに貴重な学習の時間を浪費するなら、なぞることも貴重な学びとなります。素直になぞる子もいれば、途中からは自分の想いに従って全く違うことを書き出す子もいます。

誤表記も、赤ペンで直すような心許ない指導ではなく、一緒に音読するのが一番です。子どもは誤表記にも関わらず正しく音読します。教師は誤表記のとおり音読します。すると、自分の間違いに気づき、自ら直します。そのような姿を捉えて、「間違いに気付くなんてすごいね!」とほめることを繰り返せば、注意深く推敲できる子に育っていきます。

大切なことは、一人の取りこぼしもなく、ゴールに辿り着かせることです。ゴールに辿り着けば、学習に満足し、次への学習への期待が生まれます。

しかし、ともするとできない子への支援ばかりに目が行きがちです。そうではなく、できる子への指導が蔑ろにならないように留意する必要があります。個々の児童の能力を把握し、もちうる能力を十分に発揮できていない場合は、その児童に応じた課題を与える必要があります。

「書くこと」の学習の例を挙げれば、早々とゴールに達した子には、更にもう一つの作品を書かせるのもよいでしょう。その際、異なった視点や着眼点を与えると、一段と高い学びに導くこともできます。ある部分を一緒に読み、「あなたの力なら目標の達成のためにもっとよい表現ができそうだ」と新たな課題を与えるのもよいでしょう。

こうすることで、進度の差を埋めることもできます。またより質の高い学習や量の多い学習ができたことで、更なる満足感に繋がります。例えば、一段と質の高いモデルを与えて、書かせるのです。

このような全ての児童が学習のゴールに向かって学び浸るための足場づくりを可能にするためには、教師が本単元で、または本時で達成したい評価規準を意識することが大切なのです。そして、個々の実態を事前に把握しておくことも、また同じくらい大切なのです。

上記のような「個」に寄り添う指導ができれば、「評定」にも困らないはずです。支援の数を数えれば、容易に「評定」できます。残念ながらたくさんの支援が必要だった子は「C」とならざるをえません。わずかな支援で目的を達成できた子は「B」でよいでしょう。一方、たくさんのより背伸びすべき指導に応えた子は「A」となるでしょう。

肝心なのは、子どもたちを学びに浸らせることです。子どもたちは、自らの見通しに従って夢中でゴールに向かう。その子どもたちの学びを支える支援や指導ができるように、教師が個々をしっかり見取り、子に応じた足場かけをする。こうして、どの子も目的を実現し、達成感を味わう。そして、次の学習への意欲が高まる。だから、学び浸らせる必要があるのです。

と同時に、振り返りの充実を図ります。「この学びで、新たなどのような言葉の力を獲得することができたのか」「目的に照らして、どのような表現の工夫が有効だったのか」などを個々が振り返ることで、学びも次の学習に繋ぐことが可能になります。

教師自身も、単元を振り返り、次の学習の改善点を明らかにすることで、授業改善に繋がります。

これが、これからの時代に求められる評価の姿ではないでしょうか。

国語科の「書くこと」について考えてきた当連載、いかがだったでしょうか? ここで挙げられた視点を、これからの授業づくりに役立てていただければ幸いです!

ほかの記事を読む

TOPへ