こくごレポート 第1回 東広島市立三ツ城小学校

2024.2.21

こくごレポート

第1回 東広島市立三ツ城小学校

こくごスタジオ編集部

コトハみなさん、こんにちは。
全国各地の国語授業や特色ある取り組みを紹介する「こくごレポート」がスタートします。待望の第1回は、広島県東広島市にある三ツ城小学校に伺いました!

街の紹介と学校の紹介

吟醸酒発祥の地と言われる東広島市は、お酒造りが盛んで、街の中心にある西条酒蔵通りは観光客で賑わっています。また、市内には四つの大学があり、約17,000人の学生が住む学園都市でもあります。古くから教育に熱心で、平成20年からは、日本の伝統文化の持つ素晴らしさに触れ郷土に誇りを持つことをねらいとした「一校一和文化学習」に全市立幼稚園、小学校、中学校が取り組んでいます。

小学校の正門 小学校の正門

三ツ城小学校は平成13年に西条地区人口増加に伴い新設された、創立23年目のフレッシュな学校です。現在は726名の児童が学んでいます。学校の近くには、三ツ城古墳・三ツ城近隣公園や中央図書館があり、教育環境にも恵まれています。また、スナッグゴルフがとても盛んな学校です!

三ツ城古墳 広島県で最大規模の前方後円墳が学校の目の前にあります 三ツ城古墳 広島県で最大規模の前方後円墳が学校の目の前にあります

全国大会優勝記念碑が8つもありました 全国大会優勝記念碑が8つもありました


今回のクラスは…

おじゃましたのは6年3組。「授業はみんなで創る」「まちがいは授業の宝」をモットーに、明るくて「学ぼう」という意欲あふれるクラスです。この日は市内の教員研修の一環として、多くの先生方も授業を参観されていましたが、元気よく丁寧に挨拶してくれたのが印象的でした。授業を行うのは、担任の松本幸子(まつもと さちこ)先生です。三ツ城小学校では教科担任制を導入しており、松本先生は3組だけでなく、6年生の国語も担当して2年目だそうです。

担任の松本幸子(まつもと さちこ)先生


授業スタート!

単元は6年生「プロフェッショナルたち」です。今日は8/10時間目の授業で、「『読むこと』において、文章を読んでまとめた意見や感想を共有し、自分の考えを広げる(思考力、判断力、表現力等)C (1) カ」が、単元の大きな目標の一つに設定されています。本時のめあては「大切にしたいことを伝え合い、『自分が考えるプロフェッショナルとは』をまとめよう」です。まずは、グループワークで前時までの学習を振り返り、登場する3人のプロフェッショナルの仕事や思いを確認します。

グループワークで学習

グループワークで学習を振り返った後、先生からの投げかけに、ほぼ全ての児童が手を挙げて積極的に発言していました。授業全体を通じて、児童どうしで話し合って考えを深める場面がたくさん設定されていて、自分たちで問題を解決する習慣がついているという印象を受けました。


タブレットを使ってグループで発表

「学びのあしあと」 前時までの学習を振り返るための掲示物。とてもわかりやすい 「学びのあしあと」 前時までの学習を振り返るための掲示物。とてもわかりやすい

そして、本時のめあて「大切にしたいことを伝え合い、『自分が考えるプロフェッショナルとは』をまとめよう」を、みんなで確認し、グループごとに交流がスタート。交流の様子を見ていると、時折、何人かの児童が同じ方向を向いて真剣な顔をしています。その視線の先には…

「みんなで話そう!ガイド」という掲示物

「みんなで話そう!ガイド」という掲示物が貼ってありました。国語だけではなく、いろいろな授業や場面でも活用できそうですね!

交流では、自分が紹介したい人物をプロフェッショナルカードにまとめ、カードを見せながら自分の考えや体験と結び付けて、グループ内で発表をしていました。

グループ内で発表

タブレットを使った説明

みんな、自分の思うプロフェッショナルを友達に向けてプレゼンしていました。タブレットを使った説明がとても上手でした。


考えを短冊に書いて全体で共有

次に、グループでの交流を通して、自分が考える「プロフェッショナルとは」について考えを深めます。「私が考えるプロフェッショナルとは、◯◯◯ということだ」に当てはめて発表し、自分の考えや体験と結び付けて考えるように、松本先生から指示がありました。さらに、もっと進める人は「さらにチャレンジ」と題して、教科書に出てきた人や調べた人と結び付けたり、友達の考えに結び付けたりして意見をまとめるように、と追加の指示が入ります。

子どもたちは、一生懸命ノートに書き込んでいました。 子どもたちは、一生懸命ノートに書き込んでいました。

そして最後に、プロフェッショナルについて、自分なりの考えを短冊にまとめます。

自分の考えるプロフェッショナルについて発表

意見がまとまったところで、全体の交流です。数名の児童が短冊を使って、自分の考えるプロフェッショナルについて発表をしました。

自分の考えるプロフェッショナルについて発表

発表された短冊がこちら

一人一人がしっかりとした理由を持って短冊にまとめ、発表していました。

一人一人がしっかりとした理由を持って短冊にまとめ、発表していました。


キーワードで考えを深める

松本先生から「みんなの意見、どういう言葉で表せるかな?」と質問。これに対して、「信念」「プライド」といった言葉が出てきたことは驚きでした。そして授業のまとめ。松本先生から児童に向けた最後の言葉が印象的でした。「大人でもつまずくことや迷うこと、心が折れそうになることがたくさんあります。大人だって、その度に自分自身と向き合って、答えを探し続けることを繰り返しています。今日の授業で一生懸命自分と向き合ったみんなは、『12歳のプロフェッショナル』だと思います。」 先生の言葉を真剣に聞く子どもたちの姿にちょっと感動してしまいました…


松本先生、向井校長先生にインタビュー

国語専科の松本幸子(まつもと さちこ)先生

Q 本日の「授業のねらい」「つけたい力」は?

単元の目標を意識することはもちろんですが、子どもたちに「自分事」として生き方を考えること、これからの人生でつまずいたときの支えになるような授業をイメージしました。このクラスは「意見や感想を交流して吟味する」経験が少ないため、国語の学習を通して、そのような力を身につけさせたいと考えました。

Q 「みんなで話そう!ガイド」は、主に国語の授業で使っているのですか?

今日は国語の授業で活用していましたが、言葉を大切にしたコミュニケーションができるように、さまざまな場面で活用しています。朝の帯時間にトーキングタイムを設定していますが、子どもは空気を読む(模範回答を探す)傾向があるため、さまざまな場面で、もっと率直な思いや意見の交換ができるようにと作ったものです。「話し手が話しやすい環境をつくる」、コミュニケーションを行ううえで大切なことだと考えています。

Q 授業中、学習場面ごとに机のレイアウトが変わっていたことに驚きました。

特に意識はしていないのですが…

ただ、授業のまとめのときは、みんなで共有するために教壇を中心とした扇形にしています。クラスのみんなでスクラムを組む、そんなイメージです(笑)コロナ禍で多感な時期を、孤立したスペースで、マスクで表情も分からない中を過ごしてきた子どもたちです。少しでも人とのつながり、温かさを感じる経験をしてほしいと思っています。

Q 児童がタブレットをうまく使っていました。ICTの良さは何でしょう?

東広島市はICTを特に推進している地域です。タブレットの使い方は児童の方が上手で教えてもらうこともしばしばあります…

今回の授業では、自分のお薦めの人をタブレットにまとめて紹介する活動を行いました。 与えられたスペースに短い言葉で表現する必要があるため、おのずと考えや意見をコンパクトにまとめるといった力が必要になってきます。ICTの特性を踏まえて、児童が自ら試行錯誤しながら課題を解決していくことは、これからを生きる子どもたちにとって、大切な力と言えるのではないでしょうか。

Q 最後に、「国語の授業」「国語の指導」で大切にしていることを教えてください。

私が教員になりたての頃、実は国語の授業が苦手でした。苦手だからこそ、児童にどうしたら伝わるかをたくさん考えてきました。

児童にはどう聞こえているか、どう見えているか、児童はどう考えるか…児童目線で考えた授業を常にイメージするようにしています。あとは、児童がうまく表現できたときは、それまでの努力をたくさん褒めることを大切にしています。

国語はことばを学ぶ教科です。ことばは、コミュニケーションになくてはならないもの、ことばを通して自分の気持ちや相手の思いを受け取っていきます。「ことば=心」人と人をつなぐ大切なものです。子どもたちには、ことばを大切に豊かな未来を切り拓いてもらいたいと願っています。

クラスのスローガンである「授業はみんなで創る」。授業からも、お話からも、大切にしていることがすごく伝わってきました。また、「国語はことばを学ぶ教科です」と、力強く語る先生の姿が印象に残りました。
校長の向井秀則先生からも熱いメッセージをいただきました。

校長の向井秀則先生

 ここ数年はコロナの影響から、授業も大きな制限を受けてきました。そのことによる児童の表現力の低下を危惧し、学校全体の課題として取り組んでいます。教科担任制を取り入れたこともその一つです。教科の専門性を生かした授業を行い、協働で学習する場面を創出しながら、児童には伝え合う力を身につけていってほしいと考えています。
 松本先生は、子どもをとても大事にしてくれる先生です。今日の授業も児童一人一人のことをしっかりと把握していないと、あのような授業を行うことはなかなか難しいと思います。松本先生の授業は優しさで構成されているといってもいいかもしれませんね。
 本校でも、若い教員が多くなっています。「個別最適」「協働的」「自由進度学習」など、教育の新しいキーワードに対応していくことはもちろん大切です。ただ、今日の松本先生の授業のように、流行に左右されない教科の本質を大切にした指導の在り方を忘れてはいけないと思います。

コトハみなさん、どうでしたか?記念すべき第1回目のこくごレポートはこれでおしまいです。次回は先生の学校におじゃまするかも!?
それではお楽しみに!!

(取材日:2024年1月23日)

授業の指導案はこちらDOCX

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