
2023.5.31
新教科書特集
先月こくごスタジオでもご紹介した、令和6年度から使われる新しい教科書。実際に教室で使われるのは来年度からになりますが、編集の現場では教科書の供給に合わせた指導用資料などの編集を進めています。今回は、その編集作業のために行われた「とある調査」についてご紹介します。
教科書改訂においてポイントとなるのは、やはり新しい読み物教材。特に子どもたちの反応は、教師用指導書の編集において重要な意味を持ちます。
そこで、東京書籍に勤務する社員のご家庭のお子さんにご協力いただき、教科書に収録された新しい読み物教材を読んだ評価と感想を集めてみることにしました。
新教材を一読してもらい、1〜3点の評価(点数が高いほうがプラス評価)とコメントを聴取したところ、たいへん興味深い結果が得られました。本来ですと社外秘として扱って製品開発に還元していくのですが、ふと…
「これって先生方の教材研究にも役立つのでは?」
と思い、その一部分を特別に公開することにいたしました! 教科書展示会場で新しい教科書を目にする機会がありましたら、ぜひ教材文と合わせてご覧ください。それではどうぞ!
気鋭の児童文学作家、戸森しるこさんによる書き下ろし作品。ある石をきっかけに、クラスで突如始まる騒動を描いています。子どもたちはどう読んだのでしょうか?
評価点平均 2.4!
(※3が最高点。以下同)
●「伝説」というタイトルにまずひかれた。面白かった。
●自分の小学校のころにどんぐりで同じようなことがあったのを思い出しました。
●読む前に何を学ぶのかが分かりやすいし、心情の変化も分かりやすい。
●スマホのゲームとかLINEとかは流行ってるが、こういうアナログなことに夢中になるのもいいと思った。
〔編集担当者より〕この物語は、戸森さんが子どもの頃に実際に出会った石からヒントを得たそうです。物語を読んだ子どもたちが、自分のクラスや身近な出来事に重ねて読んでくれているのが嬉しいですね。
核や原爆を題材にした児童文学を長年執筆されている作家、中澤晶子さんによる書き下ろし作品。広島の学校に転校した主人公の「亮(りょう)」が、登場人物との関わりの中で広島という場所や原爆を捉え直し、自分なりに理解していく物語です。
評価点平均 2.5!
●面白かった。自分も転校生なので、物語に感情移入が出来た。転校生である登場人物の感情の変化が上手に描かれており、リアリティがあった。
●扉絵の丸いものが何だろうと気になって考えた。主人公の「ぴんとこない」という素直な言葉にとても共感した。
●戦争について考えるきっかけになるいい文章。
〔編集担当者より〕戦争の実体験を戦時中の人の視点で描くのではなく、現代の小学生と戦争・原爆との距離感を意識した作品です。主人公の素直な言葉に共感したというコメントがありましたが、身近に戦争経験者がいない子どもたちにとっても、自分の視点で戦争や原爆について考えるきっかけになればと思います。
防除の対象となる外来種として有名なカミツキガメ。水棲生物のカメラマンである松沢陽士さんによる同題材の写真絵本を底本に、教科書教材として改めて書き下ろしていただいた作品です。
評価点平均 2.3!
●最初は、カミツキガメは噛みつくので怖いと思ったけど、話を読むとどんどんかわいそうになった。本当に悪いのは、勝手に放し飼いにした人間のほうだと思った。
●ただただカミツキガメを悪く言うわけじゃなくて、カミツキガメも頑張って生きているんだけど、いちゃいけない生き物だから、人がルールをちゃんと考えないといけない。
●カミツキガメの本当のことを知ることができたし、文の最後でこれを読む子どもたちが将来しないようにしてほしいことを書いているのが良いと思った。
●カミツキガメが悪いのか、人間が悪いのか、分からなかった。
〔編集担当者より〕筆者の観察したカミツキガメの生態の描写から、外来種をめぐる問題の投げかけへと展開されていくこの作品。コメントからは子どもたちがそれぞれ考えを巡らせている様子が分かり、「考えを広げ、深める」系統のねらいが届いて嬉しく思いました。
単純に解決できるわけではない複雑さをはらむ「プラスチックごみ」問題。『クジラのおなかからプラスチック』(旬報社)などの著作もあり、この問題に詳しい保坂直紀さんによる書き下ろし作品です。
評価点平均 2.5!
●プラスチックごみの問題がよく理解できた。プラスチックごみの量や種類の多さに驚かされた。自分の今後の行動を考えさせられた。
●最初の写真(※編集部注:漁網に絡まったウミガメの写真)がインパクトがあって興味がわいた。
●最後の「資料」にプラスチックの色々な利用の仕方が載っていて、飽きずに読めました。
●ニュースなどですでに知っている話題だったが、改めて店には不要なプラスチックの商品があふれていると思った。物を作る会社がプラスチックを使わないようにしなければ社会は変わらないと思った。
〔編集担当者より〕プラスチックごみの問題については、見聞きして知っている児童も多いようでした。その問題について改めて目を向けるだけでなく、その解決が一筋縄ではいかないこと、だからこそ「考え続けて行動すること」が大切だと気づいてくれれば嬉しいですね。
いかがだったでしょうか? このほか「筆者が指をかまれなくてよかった(カミツキガメは悪者か)」「石探し楽しそう(おにぎり石の伝説)」などの率直な感想から、筆者の書きぶりについて評価する意見までさまざまなものが寄せられました。いやあ、子どもの「読み」って本当に面白いですね。
点数はあくまで参考値であり、ここで挙げられたコメントは、いわば「初発の感想」ですが、こうした子どもたちの反応も参考にしたうえで、今後の指導資料や教材の編集を進めていきたいと考えています。
来年度になって実際に教室で使われ始めた折には、先生方のご感想などもお聞きしてみたいですね。新しい教科書教材、どうぞお楽しみに!
新しい教科書の読み物教材については、弊社が発行する機関誌「ことのはつづり2023年春特別号」でも紹介しています。こちらもぜひご覧ください!