対談 国語を楽しむ! ―― 「言葉の力」を身につけるために【前編】

2023.4.26

対談

国語を楽しむ!
―― 「言葉の力」を身につけるために【前編】

藤田伸一(川崎市立土橋小学校教諭)

弥延浩史(筑波大学附属小学校教諭)

「国語の授業は難しい」「子どもたちがどんな力を身につけたのか実感しにくい」そのような声がよく聞かれます。今回の記事では、令和6年度「新編 新しい国語」の編集委員であるお二人の先生を招いて、「読むこと」の指導についてお話を伺いました。新しい教科書の紹介も交えながら、前後編に分けてお届けします!

※当記事は、「ことのはつづり2023年春特別号」(2023年4月発行)掲載記事に未収録部分も加え再構成したものです。

――国語の授業、特に「読むこと」の指導を難しいと感じている先生が多い印象です。

弥延 国語には、子どもが自分自身の成長を実感しにくい部分があるように思います。新しい計算方法を覚えていく算数や、できたという成果が見えやすい体育や音楽など、子どもたちは習得したことが分かりやすい教科を好むようです。だから、「読むこと」の授業の中では、自分にどんな力がついたのかをしっかり見せてあげることが大切になります。

また、説明文の「段落分け」一つ取っても、構造や構成をつかんで、文章の全体像を把握するという目的があります。目的が曖昧だと、子どもたちは何のために段落分けをするのか分からないし、学んだことも残らないんですよね。学習の必要性や効果も併せて示していくことを、より意識していかなければいけない教科じゃないかなと思っています。

藤田 国語は、算数のようにはっきりと問題が書かれていないので、何を問えばいいのか、加えて、どんな力を当該学年でつけていったらいいのかが分からない。どうしたらもっと子ども主体でおもしろく、力のつく授業ができるんだろうと悩んでいる先生が多いのだと思います。

先ほどの弥延先生のお話ですが、段落のよさを教えるには、段落のない文章を使うと分かりやすいです。例えば、段落で切らずにつなげた文章を提示して、「読みにくい」と子どもたちが思ったとき、段落のよさが理解できます。それを若い先生に話すと「段落が話題に応じてまとまりごとに分かれているから、分かりやすい文章になるんですね。国語っておもしろいですね」と納得してもらえる。教材をどう料理するかが難しいんですよね。

――初めての教材文を扱う際、お二人はどのようにアプローチするのでしょうか。

弥延 私はまず、一読者として教材文を読みます。人物関係図を書いたり、初読の感想を書いたりします。その次に、どのように教材化していくかという視点で読みます。すると「中心人物の変容を捉えるときに、ここの表現に意味がある」ということや、「ここの情景描写が大事だけど、クラスの子たちは読み落とすかもしれない」ということが見えてきます。そこを、子どもに捉えてもらうための方法を考えますね。実際の授業では、必ず初読の感想を聞いて、お互いの相違点を共有させて、子どもの反応を見ながら授業に入っていきます。

藤田 私は教材文の題名が持つ意味を考えます。例えば「自然のかくし絵」(3年上巻に掲載)は、「『かくし絵』って何だろう?」と、興味をひく題名になっていますよね。ほかにも「イースター島にはなぜ森林がないのか」(6年に掲載)は、筆者が伝えたい内容が題名になっているのか、それとも要旨なのかということを想像してから教材文を読んでいくと、伝えたいメッセージはまた別のところにあることに気づく。題名に着目することには、そういうおもしろさがあります。

弥延 題名はだいじですね。5年の「和の文化を受けつぐ―和菓子をさぐる」のように、副題が付いている教材もあるじゃないですか。高学年の子どもだと、副題が付いていることの意味を自分で考えることができる。そうすると、次に別の作品を読んだときに、自分だったらこういう副題を付ける、という見方ができるようになる。副題は文章を正しく読み取っていないと付けられないし、「書くこと」の表現にもつながってきます。学んだことがちゃんとつながって広がるということが系統的に見えてくると、国語の授業、学び自体がおもしろくなりますね。

藤田 もちろん、内容のおもしろさも子どもたちには必要です。先ほどの「自然のかくし絵」も、同じような背景色のところに虫がかくれているとか、虫が葉っぱのような形で、分からないように擬態しているというのはたいへん興味深い。とはいえ、昆虫博士になるわけではなく、国語は言葉の学習をしなければならないし、子どもから出ない課題もあります。

そういうときが、先生の出番です。「バッタやゴマダラチョウなど、いろんな虫が出てきたけど、筆者は適当に具体例を並べているのかな」「好きなもの順かな」と、見方を提示してみる。そうすると、なぜこういう事例の順序になっているのかという、子どもたちに新たな視点が生まれます。それが4年の説明文「ヤドカリとイソギンチャク」にもつながって生かされていくのです。習得・活用されていくというプロセスが大切です。

川崎市立土橋小学校の藤田伸一先生 川崎市立土橋小学校の藤田伸一先生

――子どもたちが教材に興味を持つために、導入や教科書を利用するうえで大切にすべきことは何でしょうか。

藤田 そうですね。導入では、子どもたちに教材文を読んでみたいと思わせることが非常に重要です。「自然のかくし絵」でも、扉に大きな枝の写真があって、よくよく見ると、昆虫がいる。「何でこんなところに枝みたいな虫がいるんだろう?」と、わくわくするような気持ちで教材に向き合わせたいですね。そういう目で見ると、今回の新しい教科書にあるような、単元扉の大きな写真や挿絵がたいへん有効だと思います。てびきも、見開きで学習過程が非常に見やすく、だいじな部分を強調しながら作られているので、若手の先生にも使いやすいのではないでしょうか。

弥延 私も同じ考えです。てびきはシンプルになって見やすくなった。授業の流れがイメージしやすいし、子どもたちにどのような「言葉の力」をつけていくのかがよく分かる。これは一つの作品を教材化していくときに、よりどころになりますね。てびきの内容を生かして、先生がたの目の前の子どもたちに合わせて授業を展開していけばよいと思います。

――今回の教科書では、文学的文章にも説明的文章にも、新しい教材がたくさんありますね。

藤田 説明文でいえば、5年の第一教材「インターネットは冒険だ」は、メディアに関する教材です。筆者との間で意見を交わしながら書き下ろしていただきました。ネット社会を生きる子どもたちにぜひ読んで考えてもらいたいですね。ほかにも、SDGsを題材にした「『永遠のごみ』プラスチック」(6年に掲載)では、現代社会のマイナスの側面も踏まえた難しい課題について文章化しています。写真や資料も交えて身近な話題が紹介されているので、子どもたちも自分の考えを持ちやすいし、「じゃあどのようにこの局面を乗り越えていこうか」と、未来に向かって、クラスで対話しながら自分の考えを作り出していける教材になると思います。

――子どもが自分事として考えられるということは、「読むこと」の学習で大きな意味を持つのでしょうか。

藤田 自分ができることとかけ離れていると、どうしても他人事になってしまう部分がありますね。例えば、環境エネルギーの話もだいじですが、子どもに何かできることがあるかという視点で考えると難しい。それよりも身近な「ビニールを捨てたらどうなるのか」という話題のほうが考えやすい。今回は、子どもたちが自分事として考えられる教材が多いですね。

弥延 文学も、「おにぎり石の伝説」(5年に掲載)「さなぎたちの教室」「模型のまち」(どちらも6年に掲載)といった、等身大の子どもを描いた作品が増えたのが今改訂の特徴の一つです。子どもたちにとっても親近感を持ちやすく、「自分だったらどうか」という感想を持つことができる。魅力的な作品が新しく加わったので、先生方も一読者として、楽しく出会っていただきたいですね。

後編では、国語の学びを生活に広げるためのヒントや、国語で身につけるべき力=「言葉の力」について伺います。お楽しみに!

※本文中の教材名はいずれも令和6年度「新編 新しい国語」掲載のもの。

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