
2023.2.8
多層指導モデルMIM②
特別支援教育の観点から注目されている学習モデルである、MIM(ミム)。第1回に続く本記事では、栗原光世(くりはらみつよ)先生に、実践のアイディアを紹介していただきました。
※当記事は、「ひろがれ国語2022年冬号」(2022年1月発行)の記事を再構成したものです。
以前、教育実習に来ていた学生の方から、「先生が低学年の担任として授業でだいじにしていることは何ですか。」と質問を受けたことがあります。私は、「低学年でも高学年でも、相手にとって分かりやすいこと」だと答えました。分かるように伝えなければ、できるようになることも、楽しいと感じることもないでしょう。
そのためにだいじなことは、子どもたちの実態を知ることです。目の前にいる子どもたちが、いったいどのような力を持って授業に臨むのかを知り、実態に合わせた言葉と内容を持って授業を行うことが、分かる授業につながります。そして多層指導モデル MIMは、子どもの実態把握と効果的な授業を両輪とした指導法です。
「読む」ためには、だいじなことが三つあります。一つ目は、「言葉を知ること」です。言葉を知らないと、文章を読んでいても、ただ文字を追うだけで、内容を理解することは困難です。二つ目は、「文字を単語のまとまりとして捉えること」です。言葉を知っていても、文字をまとまりとして捉えられない逐次読みでは、意味を理解するために何度も繰り返し読んで単語を探すことになります。こうなると、読むことが面倒で、嫌になってしまいます。三つ目は、つまずきが多く見られる「特殊音節の理解」です。「ねっこ」の「っ」のように、文字は表記されているのに音には出さない促音は、低学年の子どもたちの文章によく脱字として表れます。こうした特殊音節を、視覚化や動作化を用いて分かりやすく伝えることが非常に有効です。
この特殊音節の指導法については、音節の種類に応じた記号を付ける視覚化や、手を叩く動作化によって指導している先生方も多いと思います。しかしながら、これだけでは、「読みのアセスメント」の結果を見ても、十分に子どもたちの力を伸ばすことは困難です。日々の学習で、一つ目や二つ目のポイントも、繰り返し指導することが重要です。
子どもたちの語彙を増やすための「トントンゲーム」というものを紹介しましょう。まず、「今日のお題は『か』の付く言葉ね。」と子どもたちに話し、1分程度考える時間を与えます。そして、みんなが考えたところで、教室の端の席の子どもから、トントンという手拍子に続いて、「かえる」トントン、次の席の子どもが「かさ」トントン、と続けて言っていくゲームです。始める際に、友達が言った言葉でも言ってよいことを伝えます。MIMで示す2ndや3rdステージ相応の子どもたちへのフォローです。誰もが参加できることが重要です。
慣れてきたら、「小さい『っ』の付く言葉」や、生活科であれば「秋に関係する言葉」、高学年では「歴史上の人物」や「都道府県」をお題にして行っています。言葉を想起する機会をもたせ、友達が言う言葉によって語彙を増やすことができます。
こうした言葉集めをした後に、「言葉の木」を作ります。葉の形の色画用紙に一つずつ言葉を書いて、貼っていきます。こうすることで、言葉を繰り返し読むことができ、見慣れさせることもできます。
言葉の木
国語の教科書に出てきた言葉を、1枚のスライドに1単語ずつ打ち込んだものを準備します。授業の開始時に、大型テレビやモニターでスライドを1単語ずつ映し、表示された言葉をクラス全員で読んでいきます。1回読んで終わりにするだけでなく、2回目は、子どもたちが1人1単語ずつ読んだり、言葉の意味を確認したり、反対の言葉を考えたりします。スライドなので、つまずいた言葉を繰り返し読む練習をすることもできますし、ちょっとした時間に繰り返し使うことができます。テンポよくスライドを変えていくことがポイントです。
また、ただ読むだけでなく「いちばん文字数が多かった言葉は何だったでしょう。」「食べられるものは、何個あったでしょう。」などと質問すると、記憶をたどりながら、「もう一度読みたい!」といった声が子どもたちからあがります。こうして繰り返し言葉を見慣れさせることが、言葉として文字を捉えることにつながります。
特殊音節の学習は1学期にしたからもう大丈夫、というわけにはいきません。定着を図るため繰り返し指導する必要があります。そこで、次のような「おうさまからのてがみ」を作ってみました。
わたしは、 とうい くにの おおさまです。
かて いる ちょいろの おおむが にげだしました。
おうかみの まねが じょおずです。
みなさんの がこうに きて いませんか。
けえさつは ひょくにんで さがして います。
みつけて くれたら かんしょの てがみを おくります。
おおさまより
「遠い国の王様が、みんなに助けを求めて手紙をくれたんだ。」と話し、手紙を拡大して黒板に貼ると「あ~、分かった。」と、子どもたちは間違い探しを始めました。手紙の2行目までは、全員で間違い探しに取り組み、その後はプリントして配付しました。個別に間違いの訂正に取り組み、このときつまずく子どもには、MIMを用いてルールの確認を行いました。そして最後に全員でルールの確認をしながら、答え合わせをしました。
掛け算九九の学習時には、九九表を教室に貼ったり、「七の段の九九を唱えてから教室に入ろう。」と書いた紙を教室の扉に貼ったり、繰り返し練習させ、定着を図るものです。言葉の学習も同じです。大切なことは何度でも学び直しが必要です。私もそうでしたが、授業では常に新しいことを教えなくてはいけないと勝手に思い込んでいることはないでしょうか。子どもたちが分からない、定着していないものは、何度でも繰り返し、同じルールで確認することが大切です。
ちなみに、特殊音節の長音の授業をほぼ同じ内容で2回行いました。子どもたちは、一度聞いた話なので余裕を持って取り組み、発言したくてたまらない、と全員前のめりで授業に参加していました。
子どもは「分かりたい」と思っています。ですから、教科を問わず、MIMの理論を持って、分かるまで繰り返し、子どもの実態を見ながら授業をしていきたいと思います。