
2026.9.9
ICT実践
「1人1台端末」時代となった今、改めてICTの活用について見つめ直してみませんか? 当コーナーでは各地のICT実践を中心に、デジタルを活用した授業づくりについて考えてみたいと思います。今回は、熊本市立龍田小学校の大塚洋司先生による実践を取り上げます。
現行の学習指導要領では、高学年の「書くこと」について、目的や意図に応じて、考えたことなどを文章全体の構成の効果を考えて書く能力を身につけさせることが求められています。また、事実と感想・意見を区別して書くことや、目的に応じて簡潔に書いたり詳しく書いたりする力、比喩や反復などの表現の工夫に気づく力も重要とされています。
今回の実践では、児童が書いた文章をICTで画像生成する活動を取り入れました。文章がどのように画像として再現されるかを視覚的に確認することで、児童は自分の表現の不足や改善点に気づきやすくなります。この「言葉から画像へ」という往還が、学習指導要領で求められる構成や表現の工夫を自然に身に付ける学びにつながると考えました。
授業の導入では、教師が一枚の写真を文章化し、それをICTで画像生成して児童に提示しました。元の写真と生成された画像の違いから、児童は「どんな言葉が足りなかったのか」を自然に考え始めます。この気づきをもとに、「写真から想像を広げたことが伝わるように、表現を工夫して写真そっくりの画像を作ろう」という学習課題を設定しました。
この課題は、学習指導要領が示す文章全体の構成を考えて書くことや事実と感想を区別して書くことといった内容と密接に関連しています。
児童は選んだ写真をもとに、「いつ・どこで・誰が・どんなふうに・何をしているか」の観点でメモを書き、文章にまとめました。これは、学習指導要領の事柄を整理し、構成を工夫することに対応しています。
次に、前時に書いた文章をICTで画像生成し、班で共有しました。「元の写真」と「自分の文章から生成された画像」、そして、「メモ」を並べて比較することで、児童は表現のずれを視覚的に捉えることができました。班での話し合いでは、「よく伝わっている表現」と「もっと工夫できる表現」について互いに助言し合い、学習指導要領が求める表現の効果を確かめて推敲する力や比喩や反復などの表現の工夫に気づく力を高めることができました。
話し合いを受けて、児童は自分の文章を推敲しました。教師は、児童が悩んだ点や改善したポイントを板書し、推敲の視点として活用できるようにしました。
授業の最後に、児童は、「今日の満足度」と「その理由」の2点で振り返りを書きました。ICTで画像生成した結果を見て「どこを、どう変えよう?」と考えた経験が、学習指導要領が示す適切に書こうとする態度の育成につながったのではないかと考えます。
本実践では、文章をICTで画像生成するという新しいアプローチにより、児童は自分の表現の効果を視覚的に確かめながら学ぶことができたと思います。授業を通して、児童の中に、「書いた文章をICTを使って画像生成することで、『もとの写真と違う』『どこを、どう変えよう?』等、自分の文章をよりよいものにしたいという願いや問いを自覚できる」という学びが確かに生まれていました。
児童は、見たままの説明から一歩進み、情景が伝わる表現を意識して書く姿へと変容していきました。この経験は、学習指導要領が求める文章全体の構成を考えて書く力や表現の工夫に気づく力を育てるうえで大きな意味をもつのではないかと思います。
今回のICTを活用した「言葉の力」を育む授業を、例えば作った俳句や短歌を画像生成してみるなどさまざまな単元に発展させてみてはいかがでしょうか。