授業のタネ 「自分で学ぶって楽しい」を目指して ~国語科における「児童に委ねる学びの実践」~

2026.7.22

授業のタネ

「自分で学ぶって楽しい」を目指して ~国語科における「児童に委ねる学びの実践」~

峰尾恭子(立川市立新生小学校教諭)

明日の授業ですぐに使えるアイディアを紹介するシリーズ第5回! 今回は、東京都立川市立新生小学校の峰尾恭子(みねお きょうこ)先生に、小学校における「児童に委ねる学び」のタネを紹介いただきました。

「今日の国語は何をするの?」
休み時間、子どもたちが発したこの言葉。それは「教師が準備した問いに対し、教師主導のもとで答えを求める」という授業の形が、子どもたちの中で当たり前になっていたことに改めて気づくきっかけになりました。子どもたちの「学びたい」というエネルギーは、休み時間に次の授業を気にするくらいあふれています。「今日はここを話し合いたい」「この場面をじっくり読みたい」といった、子どもたち自身の思いを授業の真ん中に置けたら、もっとワクワクする学びが生まれるのではないか。そのような思いから、本校では国語科を中心に「児童に委ねる学び」の実践を始めました。
本校が目指す「子どもに委ねる学び」とは、学習を子ども任せにすることではありません。子どもたちが「問いを自分たちで考える」「自分に合った学習方法を選ぶ」「自分の学びを自分で振り返る」ことができるよう、教師が環境を整えることです。1時間の中でどこを委ねるのか、単元の中で委ねる場面をどのようにデザインするのか。児童の発達段階に合わせて、委ねる場面を意図的に設定しています。


各学年での挑戦

【低学年】選ぶことのよさ、お互いの違いを知る

1年生は、学習の中で「自分で選ぶ」経験が積み重ねられるようにしています。「一人でじっくり」「友達と楽しく」など、練習方法を自分で選択。さらに「大きな声で読む」「優しい感じに読む」など、どのような読み方を心掛けるのかといった「めあて」も自分で決めました。タブレットで自分の声を録音して聞き直し、「前より大きな声になった!」「すらすら読めている」と、自らの成長を実感する姿が見られました。

2年生は、主人公の人物像について、まずは一人で考え、その後グループで話し合いを行いました。同じ登場人物でも「悪いやつ」「悪そうだけど、実はやさしい」などと見方が分かれ、友達と話すことで多様な捉え方があることを実感できるようにしました。こうした活動が、互いの意見を認め合う貴重な経験につながると考えています。

【中学年】自分たちで学習を進められる時間を増やす

中学年では、低学年の頃よりも子どもたちだけで話し合う時間を増やしています。主人公の人物像を捉える学習では、3〜4人のグループをつくり、教科書の記述から、主人公の必死さや相手に対する思いの深さを読み取りました。想像ではなく、文章を根拠に考える読み方です。話し合いの中では、「本文のどこに書いてある?」と、教科書を指差しながら熱心に議論する姿が見られました。

また、話し合い活動では話す側に着目しがちですが、本実践では「聞く側」を育てることにも着目しています。しっかり聞くことで新たな問いが生まれ、キャッチボールのようなやり取りの中で、お互いが気持ちよく学ぶことができるからです。

話し合いが少しずれた方向に進んでいると、つい教師が助言をしたくなるのですが、ここはぐっと我慢。少し遠回りをしても、自分たちで見つけた「気づき」こそが、子どもたちの心にいちばん深く残るのだと考え、あえて声を掛けずに見守るようにしています。「結局、先生が答えを出すんでしょ」と、子どもたちに思わせないための大切な引き算です。

【高学年】「問い」作りからゴールまで、自分たちの力で

高学年の学習は、子どもたちによる「問い」作りから始まります。第1時でいきなり初発の感想を書くのではなく、授業が始まる1週間以上前から、朝の学習時間などを活用して音読や意味調べに取り組み、「問い」作りの土台を整えておきます。そうして迎えた第1回目の授業では、一人一人が思い思いの疑問を挙げます。その中から、学級全体で話し合う価値のある問いを精査し、どの順番で、どのように考えていくかを議論して決めていきます。こうして決まった問いについて、翌日の授業に向けて自宅で自分の考えを「反転学習」を通してまとめてくるため、授業はすでにそれぞれの考えをもった状態からスタートします。また、学習者用デジタル教科書を活用して、自分の考えを書き込んだり、登場人物の行動や気持ちを色分けして整理したりする児童もいます。一方で紙の教科書を使う児童もおり、それぞれが自分に合った方法を選択できるようにしています。学び方を選べることも、「子どもに委ねる学び」の大切な要素の一つです。

「自分の考えをみんなはどう思うのか」「みんなはどんな答えを考えてきたのか」と、子どもたちはワクワクしながら授業に臨みます。授業が始まるとすぐに、家で考えてきたことを誰からともなく話し始め、自分たちでゴールに向かって歩み始める姿が見られます。誰かの考えを聞くだけではなく、自分の考えを表現していくことで、学習そのものを「自分ごと」として捉えられるようになってきました。

【特別支援学級】その子らしい「自由な表現」

特別支援学級の学習では、単元の終わりに、物語の登場人物に手紙を書く活動を取り入れました。これまでであれば「主人公に手紙を書こう」という一律の活動にしがちでしたが、「一人一人、印象に残った登場人物は異なるのではないか」と考え、子どもたちに「誰に手紙を書くか」を委ねてみました。すると、それぞれが思い思いの登場人物を選んで手紙を書き、そこからはその子らしい自由で豊かな言葉があふれ出しました。委ねることで初めて見えてくる子どもの姿があることを、私たち自身が教えられました。


おわりに

ご紹介した授業実践は、これまでにも取り組まれてきた活動ばかりかもしれません。目新しい方法ではなくても、学校全体で「子どもたちに委ねる」という視点を共有し、6年間を通して積み重ねていくことで、子どもたちが自ら学びをつくる力が育っていくのではないかと考えています。子どもたちに学習を委ねるようになってから、「以前よりも国語が好きになった」「学習するときに比較したり関連付けたりして考えるようになった」と話す児童が増えてきました。また、すぐに答えが見つからない「問い」について、友達と「ああでもない、こうでもない」と対話そのものを楽しむ姿も見られるようになりました。

さらに、本校で実施している標準学力調査PBTでは、「比較・関連付けて考える力」に関する項目において大きな伸びが見られました。子どもたちが問いをもち、自分の考えを表現しながら友達との対話を重ねてきたことが、その一因ではないかと考えています。

一方で、子どもたちに委ねる学びには難しさもあります。話し合いが深まらないこともあれば、教師がもう少し支援したほうがよかったのではないかと悩むことも多々あります。また、一人でじっくり考えたい子もいれば、友達との対話の中で考えを広げたい子もいます。だからこそ、「子どもに委ねる」ことと「教師が教える」ことのバランスや、「個別最適な学び」と「協働的な学び」をどのように往還させるのかについては、今も試行錯誤を続けています。

明確な答えはまだ見えていません。しかし、子どもたちが自分なりの方法で学びに向かい、必要に応じて友達と関わりながら考えを深めていく姿を見るたびに、その可能性を感じています。これからも、一人で考える時間と、みんなで響き合う時間の両方を大切にしながら、子どもたちが「自分で学ぶって楽しい」と感じられる授業を、子どもたちとともにつくっていきたいと思います。

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