こくごレポート 第10回 宮城県気仙沼市立津谷中学校 ~単元内自由進度学習のすすめ~

2025.12.17

こくごレポート

第10回 宮城県気仙沼市立津谷中学校
~単元内自由進度学習のすすめ~

こくごスタジオ編集部

コトハ今回取材するのは、宮城県の気仙沼市立津谷中学校です。3年生の単元内自由進度学習を見学してきました!

学校の紹介

気仙沼市立津谷中学校は、宮城県北東端に位置する気仙沼市にあり、各学年2クラス全校生徒およそ140名の学校です。同校は、令和3年度に宮城県教育委員会の「個別最適な学びに関するモデル事業指定校」となり、「個別最適な学び」についての研究を進めてきました。それに伴って令和5年度から単元内自由進度学習に取り組み始め、公開研究会では、数学・体育・理科で自由進度学習を提案しました。現在では、すべての教科で単元内自由進度学習を含んだ個別最適な学びと協働的な学びの一体的充実を目指した授業を行っています。

気仙沼市立津谷中学校 気仙沼市立津谷中学校


単元内自由進度学習

津谷中学校の自由進度学習は、単元を一つのまとまりとして学習を考えます。まずは、教師が独自の単元を構想し、その単元全体を通した大きな問い(単元を貫く問い)を設定します。そして、生徒が学習を進めるための参考となる「学習のてびき(シラバス)」を作成します。生徒たちはそれを元に、学習計画を立て、学ぶ順番や方法・教材を自由に選択しながら学習を進め、最終的にはその問いの答えを導き出すことになります。


授業開始

今回取材にお邪魔したのは3年1組、授業者は伊藤大輔先生です。本日の授業は、「万葉集・古今和歌集・新古今和歌集」「おくのほそ道」「論語」を一つにまとめた全12時間単元の7時間目となります。この単元には「和歌や漢文などの古典作品は、なぜ現代まで読み継がれているのだろうか」という単元を貫く問いが設定されています。

単元全12時間の流れ 単元全12時間の流れ

授業が始まりました。まずは伊藤先生から、単元を貫く問いは何であったか、今日は何時間目なのか、また、今日の学習場所とそれに対応する学習方法などが示され、全体でそれを共有します。生徒は自分の進度状況を確認し、今日は何に取り組むかを決め、タブレットに入力します。それが授業支援ツールを通じてリアルタイムで全員と共有されます。それにより、自分と同じ学習に取り組む生徒が一目で分かり、協働的な学びを促します。そして「やることを決めたら、各自動き始めてください」という先生の言葉をきっかけに、生徒たちは一斉に動き出しました。

単元の問いを全体で再確認する 単元の問いを全体で再確認する


生徒それぞれが主体的に

まず、教室では、生徒たちがお互いの机をくっつけ始めました。教室は話し合いのための場所として設定されており、相談しながら学習を進めていきます。逆に、コモンホールはどうでしょう。ここでは生徒たちが一人で黙々と学習を進めています。そして音楽室に行ってみると、そこには音読の練習をする生徒たちがいました。先生がいないと、友達どうしでふざけてしまう生徒もいそうですが、そんな生徒は一人もおらず、皆きちんと自分の学習を行っているのがとても印象的でした。

教室で話し合いしながら学習をする生徒 教室で話し合いしながら学習をする生徒

コモンホールで一人黙々と学習をする生徒 コモンホールで一人黙々と学習をする生徒

図書室では、伊藤先生による「論語」のミニ講義が行われていました。講義は、誰でも聞けるように毎回アーカイブされていて、以前の講義を視聴しながら学習に取り組む生徒もいました。講義が終わると、講義を参考にしながらワークシートに取り組んでいました。別のグループでは、教科書と関連する書籍を見比べながら「教科書にも同じことが書いてあるね」と言葉を交わしながら、自分なりにまとめていました。

伊藤先生による論語のミニ講義 伊藤先生による論語のミニ講義

廊下には「万葉集」「古今和歌集」「新古今和歌集」「おくのほそ道」「論語」に関する本がたくさん用意され、生徒が自分の学習に合わせて、自由に持ち出すことができるようになっていました。また作品ごとに学習プリントが用意されていました。それをデータでも配信しているため、タブレット上で学習に取り組む生徒も見られました。1、2年の古典の学習内容をまとめた掲示物や、一問一答式の問題も、廊下に配備されていました。

廊下に用意された参考図書 廊下に用意された参考図書

各作品の学習シート 各作品の学習シート


授業のまとめ

授業の終わりが近づき、生徒たちが教室に戻ってきました。生徒たちは、それぞれ自分のタブレットに、今日の振り返りを入力していきます。分かったこと、分からなかったこと、参考にした資料、そして疑問に思ったことなどを書き込み、それらは授業支援ツールを通してリアルタイムに共有されていきます。まとめ方も多様で、文章で簡潔にまとめる子、フローチャートを用いてわかりやすく図にまとめている子など、さまざまな形が見受けられました。全体を通して、先生が細かい指示をしなくても、生徒たちが自ら動いているのが、とても印象的な授業でした。


伊藤先生にインタビュー

伊藤先生 伊藤先生

Q 単元内自由進度学習の手ごたえは?

大いにあります。一斉授業では教師の話を聞いていない生徒も、単元内自由進度学習では、自分で学習を進めなければならないため、主体的に取り組む姿が見受けられます。また、課題の提出も、一斉授業ではきちんと提出しない生徒も、しっかりと提出することが多く見受けられます。

Q 全時間で単元内自由進度学習をしている?

年間授業計画を立てる段階で、どの単元を一斉指導にするか、もしくは単元内自由進度学習するかを決めています。学習する領域によって、一斉指導向きだったり、単元内自由進度学習向きだったりするため、そこを見極めて設定します。今年度は、全体のおよそ4割を単元内自由進度学習で実施する予定で進めています。

Q 単元内自由進度学習のメリットは?

国語が苦手の生徒に対して、多くの時間を使い、しっかりと寄り添えることです。得意な子に関しても、自分のペースでどんどん学習を進めることができるため、得意な子にとってもメリットがあると思っています。

Q 単元内自由進度学習のデメリットは?

教師側の話になりますが、授業の準備がたいへんなことです。単元内自由進度学習では、一斉指導のようにその都度でなく、単元の前に全てを準備しておかなければなりません。ただ、実際に始まってしまえば指導に集中することができるので、そこはメリットかと思っています。

Q 単元内自由進度学習の授業で意識していることは?

生徒たちが、深く考え、自らの言葉で発信することを促すための「ファシリテーター」としての役割を意識しています。そのため、授業中は生徒の思考の妨げにならないように、余計な口出しはしないように心掛けています。生徒たちの最終的なゴールは同じですが、そこに到達するまでの道筋を複数示してあげることを意識して指導しています。

Q 単元内自由進度学習に向いている学校は?

どのような学校でもできると思います。本日授業をしたクラスも、ふだんはおとなしい生徒たちですが、単元内自由進度学習のときは、生き生きと授業に取り組んでくれます。私も最初は不安でしたが、教師側がしっかりと準備し、道筋を示してあげれば、どんな学校の生徒たちでも意欲的に取り組んでくれると思っています。

Q 単元内自由進度学習をまず始めてみるとしたら?

「書くこと」「話すこと・聞くこと」など、言語活動の多いものは取り組みやすいと思います。「読むこと」は一斉指導の方が向いているケースも多い印象です。最初の準備はたいへんですが、やってみると意外とできてしまいます。一斉授業は、生徒が理解できなければ教師の自己満足に過ぎません。教師が直接教えなくても、生徒自身が理解し、できるようになることが重要だと考えます。「自由進度学習は難しそう」という先入観は捨てて、まずはやってみることをおすすめします!

(取材日:2025年10月)

授業の指導案はこちらPDF

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