国語教師のための日本語講座 それって方言? 共通語?

2025.10.8

国語教師のための日本語講座

それって方言? 共通語?

こくごスタジオ編集部

こくごスタジオ編集部は、取材のために全国の学校にお邪魔していますが、地域ごとに耳にする方言にはとても興味深いものがあります。そこで今回の日本語講座では、この「方言」について考えてみたいと思います。

いきなりですが、教室の中にある「ラーフル」、何のことか分かるでしょうか? 「ラーフル」は、主に九州や四国の一部の地域で使われている言葉で、「黒板消し」のことを指します。学校用品や文具を扱う業界では商品名として使われることもあるためか、共通語だと思っている人も少なくないようです。共通語だと思っていたら、実は方言だったという経験、お持ちではないでしょうか?

・保健室でサビオをもらった→保健室でばんそうこうをもらった(北海道など)

・掃除の時間にごみを投げた→掃除の時間にごみを捨てた(宮城県など)

・柱にぶつけて青なじみができた→柱にぶつけて青あざができた(茨城県など)

・授業で先生にかけられた→授業で先生に指名された(新潟県など)

・今日の宿題はカドです→今日の宿題は漢字ドリルです(岐阜県など)

・机を吊っておいて→机を運んでおいて(愛知県など)

「えっ! そうだったの?」と思った言葉もあるかもしれませんね。これらはいずれも語彙の違いですが、方言にはこのほか、音韻や文法の違いもあります。 

現行の学習指導要領(平成29年告示)では、小学校5・6年に「共通語と方言の違いを理解すること」、中学1年に「共通語と方言の果たす役割について理解すること」という指導事項があります。また、この事項についての解説として、「それぞれの特質とよさを知り、共通語を用いることが必要な場合を判断しながら話すことができるようにすることが重要」(小学校)、「方言を尊重する気持ちをもちながら、共通語と方言とを時と場合などに応じて適切に使い分けられるようにすることが大切」(中学校)と説明されています。

共通語は、異なる地域の人どうしがコミュニケーションを取るために必要なもので、改まった場面や、何かを広く人々に伝える際には、共通語で表現することが求められます。子どもの成長過程においても、生活空間や社会経験が拡張していくことに伴い、共通語を適切に運用できる力が大切になってくるでしょう。

一方、だからといって子どもたちの使っている方言が「悪い・間違っている」ものではないということには、留意が必要です。方言には方言でしか表せないニュアンスがあり、その地域の人どうしがコミュニケーションを取るうえでは欠かせないものだからです。

この記事の冒頭では、「これって方言だったの?」と感じられるかもしれない例を挙げましたが、そのような独特な語彙が用いられていることのよさや理由を考えさせたうえで、共通語との違いに目を向けられるとよいですね。

また、方言と共通語の学習においては、東京(ないし首都圏)の児童生徒と、それ以外の児童生徒とでは、受け止め方が違うことも予想されます。東京(ないし首都圏)では、自分たちが日常的に使う言葉が方言だとは意識しにくいものですが、それは共通語の役割に照らして、自分たちの「方言」が共通語として運用されているということに気づかせていきたいところです。

異なる地域の人たちと伝え合える共通語、生まれ育った地域に根差した方言、どちらにもそれぞれのよさがあります。そのよさを理解したうえで適切に使い分けていくためには、言葉に関する知識も必要です。相手や場に応じて適切に言葉を選ぶ力をつけていきたいものです。

東京書籍の教科書では、小学5年と中学1年に、それぞれ「方言と共通語」という教材を設けています。そこでは、2次元コードからアクセスできるデジタルコンテンツとして、実際に各地の方言を聞くことができる動画を掲載しています。ぜひ授業でご活用ください。

今回の「国語教師のための日本語講座」いかがだったでしょうか? なお、東京書籍では『目で見る方言』という書籍も発行しています。日本各地の方言を取り上げ、それぞれ何を意味しているのかを写真で分かりやすく示した本です。方言にまつわる興味深いコラムも掲載しています。授業の小ネタに、ぜひどうぞ!

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