
2025.9.10
ホンとの出会い
今回の「ホンとの出会い」では、魔法の文学館(江戸川区角野栄子児童文学館)をご紹介します。東京都の北小岩で育った角野栄子さんにとって、江戸川の土手は思い出の遊び場だったといいます。魔法の文学館は、そんな江戸川のほとりにある「なぎさ公園」の中に建てられ、2023年のオープン以来、子どもたちの心をときめかせています。
魔法の文学館は、児童文学作家・角野栄子さんの作品と功績を多くの方々に伝えるとともに、未来を担う子どもたちが児童文学に親しみ、豊かな想像力を育む場となることを目指した児童文学館です。
館内に入ると、角野さんの代表作『魔女の宅急便』の舞台、「コリコの町」をイメージしたいちご色の世界が広がります。1階「コリコの町」エリア内にある猫型モニター周辺では、角野さんのメッセージ映像と、角野さんの作品に出てくるキャラクターのプロジェクションマッピングを楽しむことができます。近くには角野さんの作品も多数展示されており、東京書籍「新編 新しい国語」1下に掲載されている『サラダでげんき』もありました。
館内には約15,000冊の蔵書があり、うち8,000冊ほどが展示されています。「年齢が低くても、大人向けの本も読んだっていい」「大人だって児童書を読んだっていい」という考え方の下、幅広い年齢向けの図書が置かれています。なかでも力を入れて選定しているのは、「幼年童話(幼年文学)」。幼年文学は、絵本から普通の本へ移行する段階に位置する文学です。読みやすさやおもしろさはもちろん、読者がその後⻑めの児童文学作品に親しむためのきっかけともなります。「自分の力で1冊読みきった達成感を味わってほしい」という角野さんの思いもあり、館内で読みきれる分量の幼年文学が多く選ばれているそうです。
これだけの本を、館内のあらゆる場所で読めるところが、この文学館の大きな魅力です。小部屋のようなスペースから、寝転がれるスペースまで。なんと階段の途中でも、クッションに座りながら過ごすことができます。晴れた日には、館外の丘に出て読書を楽しむこともできます。
本の展示にもこだわりが。書名順でも作家名順でもなく、子どもたちの自主性を活かすべくあえてさまざまな種類の本を組み合わせたレイアウトになっています。知っている本を見つけても、周りには関連のない本があるので、まだ読んだことのない作品にも出会いやすくなっています。
とはいえ、単なるランダムな並べ方ではありません。例えば、一番下の段に絵が多めの本、上の段には文字が多めの本を置くなど、下段から上段にかけて対象年齢がグラデーションになるよう並べられているそうです。このほかにもさまざまな工夫が隠れているので、ぜひ探してみてください。
小さい子向けの本は下段にあります。(撮影:編集部)
おや、こんなところに靴が……誰かの忘れ物でしょうか? 実はこれ、子どもたちの目印になっているそうです。土足禁止のスペースでも、これなら自然に靴を脱げそうですね。
館内には、わくわくする仕掛けもいっぱい。扉を開けたり、小窓をのぞいてみたりと、さまざまな楽しみ方ができます。取材日にも、思い思いに過ごす子どもたちの姿が見られました。当日開催されていた企画展「ここ、コリコ」でも、コリコの町にちなみ、自分の好きな町を組み立てられるパズルが設置されるなど、館全体で仕掛けが充実していました。
(企画展「ここ、コリコ」は、2025年12月15日までの開催です。)
ほかにも、角野さんの仕事場を再現した展示や、作品にちなんだ食べ物が提供されている「カフェ・キキ」などがあり、作者・作品の世界に浸れる空間になっています。
「本をひらけば たのしい世界」
角野さんの思いが詰まった文学館に、ぜひ足を運んでみてください。
(取材 2025年6月)
写真提供:魔法の文学館
※特記があるものを除く
魔法の文学館(江戸川区角野栄子児童文学館)
〒134-0085 江戸川区南葛西7-3-1 なぎさ公園内
開館時間 9:30~17:30(最終入館16:30)
※カフェ・キキ 営業時間
10:00~17:30(ラストオーダー17:00)
休館日 火曜日、年末年始(12月29日~1月3日)
※火曜日が祝休日の場合は開館し、翌日が休館となります
入館料 一般(15歳以上)700円、こども(4歳~中学生)300円
(※施設情報は、取材日の情報に基づいています。)