こくごレポート 第8回 広島県廿日市市立七尾中学校 ~「平和のバトン」を読んで ~

2025.8.6

こくごレポート

第8回 広島県廿日市市立七尾中学校
~「平和のバトン」を読んで ~

こくごスタジオ編集部

コトハ今回取材するのは、広島県の廿日市市立七尾中学校です。新教材「平和のバトン」(「新編 新しい国語1」東京書籍)の学習を見学してきました!

学校の紹介

広島県廿日市市にある七尾中学校。「七尾」は江戸時代以前の古文書にも載っている古い地名だそうで、昭和24年に四つの学校を統合して開校した際に、由緒あるその地名にちなんだ校名が付けられたとのことです()。校訓である「感・考・行」の具現化を目指す教育に取り組んでいます。

学校の紹介


新教材「平和のバトン」

「平和のバトン」は、広島市立基町(もとまち)高等学校で行われている「次世代と描く原爆の絵プロジェクト」を題材にした文章で、筆者である弓狩匡純(ゆがりまさずみ)さんの同名書籍をもとに再構成した作品です。令和7年度から東京書籍の中学1年の教科書に掲載されています。

戦後80年を迎える今、当時の戦禍と平和の希求をどう「継承」していくのかということが、ますます重要になってきています。「継承」という視点から、戦争と平和について考えてほしい ―― そのような意図と思いを込めて掲載した新教材。果たして中学生はどう受け止めるのか。期待と不安を胸に、教室に向かいます。


授業スタート

今回見学したのは、平田恵子(ひらたけいこ)先生による1年3組の授業。導入として、6月の総合的な学習の時間で平和記念公園を訪れた際に生徒が書いたものを、それぞれの生徒に渡していきます。そのときの感想や考えたことと関連付けながら「平和のバトン」を読むことで、さらに学びを深めていくよう生徒たちに伝えて授業がスタート。

題名の「バトン」という言葉の持つイメージを確認し、「記憶」と「記録」というキーワードに触れた後、先生による範読が始まります。

授業スタート

生徒は範読を聴きながら、自分が気になったところや印象に残ったところを、ペンで教科書に書き込んでいきます。どの子もみな、真剣に教材に向き合っている様子がうかがえます。


付箋を使って考えを交流

範読が終わると、グループ活動に移ります。グループごとにワークシートと付箋が配られます。ワークシートには、「印象に残った言葉・描写」「よりよい未来を築くために、今日からできること」などの観点が書かれており、その観点に沿って考えたことを付箋に書き、それをワークシートに貼っていきます。

グループの話し合いに耳を傾けていると、「『描写』ってなに?」という発言が。すかさずほかの子が「教科書の46ページに書いてあるよ。」とフォロー。そのまま該当ページを開いて、「描写」という言葉の定義をみんなで確認していました。ちょっとしたことでも、分からないままにせずしっかりと定義を確かめ合っていく姿に感心しました。

しばらくすると、貼られた付箋を見ながら、グループの中での話し合いが始まります。最初は付箋の数が少なめだったグループも、話し合いを進めるにつれ付箋が増えていき、クラスでの発表前には、どのグループのワークシートにも多くの付箋が並んでいました。

付箋を使って考えを交流

意見を交わしながら自分の考えを深めていき、その考えをまた交流することでグループ全体の学びが深まっていく。シンプルながらも、まさに「対話的で深い学び」が展開されていると感じました。


グループで発表

終盤に近づくと、いくつかのグループによる発表が行われました。

「印象に残った言葉・描写」では、本文にある小倉桂子(おぐらけいこ)さんの体験を挙げている生徒が多いようでした。文章だからこそ迫るものがあったのかもしれません。また、「いちばん大切なものは想像力」という小倉さんの言葉に注目した生徒もいました。「平和を築くために大切なこと」という観点では、まさにこの教材のテーマである「継承」を踏まえた意見がいくつも出ていました。

最後には、「私たちも!」と、残り時間内で発表したいグループどうしがじゃんけんをする場面も。学習したみんなの気持ちが溢れているようでした。他人事ではなく自分事としてこの教材のテーマに向き合っている様子を見て、取材者もまた、「平和のバトン」をつなぐことの意味を考えさせられました。


平田先生にインタビュー

平田先生 平田先生

Q 本日の授業では、どのような点を工夫されましたか?

6月に平和記念公園を訪れた際、生徒たちはそれぞれが感じたことを書いており、それを導入として配付しました。同じ出来事についてでも、見聞きして感じたことと文字で読んで感じることとでは、違いがあるはずです。そのことに気づいてほしいというねらいもありました。 本校ではICTの活用も進んでいますが、今回は教材とテーマの特性を考えて、あえてアナログなワークシートと付箋というやり方を選びました。

Q 新教材である「平和のバトン」を扱ってみた感想は、どうでしたか?

1時間の授業で完結できる分量で、まとまっていて使いやすかったです。セクションごとに区切りがある点が、指導するうえで助かりました。生徒たちにとっては、小倉さんの体験談が特に印象に残ったようです。みな、いつもはなかなか見せないほど静かに、真剣に話に聞き入っていました。 この教材だからこそ、生徒たちの心に深く、まっすぐに響いたのだと思います。

Q これまでの教材と比べて、どのような点が違うと感じましたか?

戦時中の様子を描いたこれまでの作品では、登場人物に対して「かわいそう」という感情で終わってしまうことが少なくありませんでした。しかし、「平和のバトン」は「今の私に何ができるか」という問いを生徒たちに投げかけるものになっていると思います。「たいへんだったね」「悲惨だったね」だけで終わらせず、その先にある「これから」を見据えることを促してくれるものであり、 平和教材として非常に意味のあるものだと感じています。「いちばん大切なものは想像力」という小倉さんの言葉がありましたが、これは何事についても言えることだと思います。今日の学習が、国語にとどまらず、さまざまな学びにつながっていくことを願っています。

^七尾中学校のWebサイトより

(取材日:2025年7月)

ほかの記事を読む

TOPへ