
2025.7.9
夏休み明けの授業を考える 第1回
今回は、夏休み明けの国語の授業開きについて、3名の先生がたにアイディアをお寄せいただきました。もうすぐ夏休みを迎える今だからこそ、ちょっと先の未来について考えてみませんか?
溝上剛道 先生
長い夏休みが明け、ちょっぴりどきどきしている子どもたち。そんな学期初めこそ、一人一人が安心して自分の言葉を紡ぎ、友達の話に耳を傾ける温かな関係性が必要です。ここでは、レオ·レオニの絵本『フレデリック』の読み聞かせから始める〈聴くー語る〉関係づくりのためのアイデアをご紹介します。この活動は、夏休み明けはもちろん、いつでも、また発達段階に合わせてどの学年でも取り組めます。
(あらすじ)5匹の野ねずみたちが冬に備えて食料を集める中、フレデリックはひとり、光や色、言葉を集めていました。冬になって食料が減り、寒さで会話もなくなったとき、フレデリックは語り始めました。全てを語った彼は恥ずかしそうに、けれど誇らしげに「そういうわけさ」と語り、物語は幕を閉じます。
読み聞かせ後は「『そういうわけ』ってどういうわけ?」と問いかけ、フレデリックが集めていたものと、それが仲間たちをどう変えたかを確かめていきます。そのうえで、「みんなもフレデリックみたいに語るとしたら、どんなことを語りたい?」と問いかけましょう。この問いかけが、子どもたちの内側にある「語りたいこと」を見つけるきっかけとなります。
自分の好きなことや夏休みの思い出など、「これを語りたい。」「これなら語れる。」という語りのタネを自由に集めます。思いつくだけノートやICT端末に書き出し、まずはペアで聴き合う場を設けます。
自分の好きなことなら、きっと「やってみたい!」という子が出てくるでしょう。数名を全体で取り上げ、「どんなところが心に残った?」「〇〇さんの語りのいいところは?」などと問いかけます。子どもどうしの言葉で価値づけ合い、第2回以降への期待感を膨らませていきます。
人は皆、自分だけの「物語」を持っています。それを大切に集め、語り合い、聴き合う……。そんな「語り手の時間」が子どもたちの心をつなぎ、2学期の学びを豊かにスタートさせるきっかけとなれば幸いです。
【参考文献】
『フレデリック』(レオ=レオニ/作 谷川俊太郎/訳 好学社 1969)
『作家の時間−「書く」ことが好きになる教え方・学び方【実践編】−』(プロジェクト·ワークショップ編 新評論 2008)
森川正樹 先生
それでは早速、子どもたちとの教室でのやり取りを再現しながら、夏休み明け、授業開きの「書く」の授業を紹介します。
*とびっきりの笑顔で(←ここ大切です!)
T皆さん、久しぶり! おはようございます!
*間髪を入れずに、畳みかけるように活動に入っていく。ダラダラと話さない。
Tノートに書きましょう。日付!
今から「夏」をテーマに、夏休みを振り返りたいと思います!
書きだしはみんないっしょ! 「私の夏休みは、○○の夏。」です。この○○に自分で言葉を入れてみてください。入る言葉は人によってさまざま。みんな違っていいからね。
︙
Tでは、まずは何が入りそうか聞いてみますね。パスありでどんどん答えていきましょう。パスした人は先生がもう一度戻ってきたときに言ってくださいね。はい!
C私の夏休みは、プールの夏です。
Tはい、いいねえ。夏休みに経験したことや、行った場所、読んだ本、食べたもの……何でもいいよ~。
C私の夏休みは、旅行の夏です。
Tどんどん行こう!
C花火大会の夏です!
C宿題の夏です……。
T宿題できた?!(笑)
Cそうめんの夏です。
T先生も大好き!
Cけがの夏です。
Tえ~!! 何? 今知りたいけれど……取りあえず置いておくぞ~。
︙
Tでは、このような感じで、それぞれ夏休みを振り返る文章を書いていきます。こういう短い文章をエッセーともいいます。書きだしは今書いた、「私の夏休みは、○○の夏。」です。
T書きだしの題材が決まらない人は、先生といっしょに決めましょう。それでは続きの書き方です。
Tここまでをまず完成させよう。基本の5文章だね。その後は先生に任せておいて! この文章に魔法の粉をかけて、パワーアップさせるから。
Tこの五つの文章の間に、文を追加していくのです。どの番号の後に追加すると思う?
C②? ③?
Tそう。②と③と④だ。一つずつ文を足していこう。
T「+」の文章が入ったので、詳しくてすてきな文章になりました。ではみんなもまずは自分でやってみよう。
全員に書かせて終了。
書きだせない子には教師が遠慮せずに言ってあげて、書かせてあげましょう。
「全員が書けた」ということが夏休み明けの時期に大切な「安心感」を担保し、これから始まる2学期の学びのよきスタートとなります。
中野紗耶香 先生
夏休み明けの高学年の教室。静かで、どこかよそよそしい雰囲気が感じられることがあります。そこには、久しぶりに友達と会って、気恥ずかしく思ったり、「うまく話せるかな?」と緊張したりする子どもたちの姿が見られます。そんな高学年の夏休み明けには、本格的に授業に入る前に、友達と自然に話せる場を作るとよいでしょう。
①各自、自分の夏休みを象徴する「キーワード」を三つほど付箋紙や画用紙などに書く。ランキング形式にしてもよい。キーワードは、思い出の場所でもよいし、味わった気持ち、象徴的な出来事など、何でもよい。後から友達に選んでもらうので、「『何の話だろう?』『知りたい!』と思わせるキーワードがよいよ。」と伝えておく。



*話の中心はキーワードに入れない、話の予想がしづらいキーワードにする、「……」「!」「?」などを語尾に付けるなどすると、相手が興味を持ちやすくなる。
*先生が、自分の夏休みのキーワードを例として挙げ、子どもたちが聞きたいキーワードについて実際に話すと、盛り上がるし、活動のイメージが持ちやすくなる。
②グループになって、順番に夏休みの思い出や心に残ったことを話していく。その際、①で書いたキーワードから一つを友達に選んでもらい、それについて話す。話の後は、質問をしたり、その話題についての話を広げたりして会話をする。
③全員が話し終わったら、もう一周するなどして、トークを続ける。全てのキーワードについて話し終わらない場合は、休み時間や給食の時間などに、「気になるキーワードについて質問するといいよ。」などと促し、子どもたちどうしの会話のタネを残すような働きかけをするとよい。
④グループ活動の後、全体の前で話したい児童がいれば、話す場を作ってもよい。また、ぜひみんなの前で披露してもらいたい友達を推薦するなどしてもよい。さらに、「どのキーワードがよかった?」と問い、いくつか興味を引くキーワードを出すと、その特徴が分かり、新聞などの小見出し等の表現に生かすことができる。
友達どうしの距離を縮めることが、学びを深める集団へと戻す第一歩。「知りたい!」「聞きたい!」を生み出すキーワードトーク。短時間で実践できますので、ぜひ取り組んでみてください。
いかがでしたか? 夏休み明けに限らず、日々の授業にも活用できそうなアイディアですね。
次回は、発達臨床心理学の専門家である岸野麻衣先生に、夏休み明けの授業に向けた留意点についてお話を伺います。ぜひ、お楽しみに!