
2025.6.25
こくごレポート
今回のこくごレポートは、米子市立淀江(よどえ)中学校の書写の授業を取材しました!
米子市では全中学校区でコミュニティ・スクールを導入し、学校・家庭・地域がいっしょになり、全ての力で子どもを育てる取組を推進しています。
鳥取県西部に位置する米子市淀江町は、豊かな自然や古代の歴史を体感できる町です。名水百選に名を連ね、数々の国指定史跡や古墳が存在し、「水と緑と史跡のまち」として県内外から多くの人が訪れます。
淀江中学校は、「いじめ・からかい・悪口のない安心安全な学校を自分たちでつくる」を生徒・教員の共通目標とし、全校生徒が安心安全に過ごせる学校づくりに取り組んでいます。また、地域のかたと協力して行うボランティア活動や、淀江町の伝統工芸品である淀江傘を使った体育祭の傘踊りなど、地域とのつながりを大切にしています。
淀江中学校の前庭
体育祭の傘踊り
淀江中学校では毎年、3年生の卒業制作として、書写の共同作品を学級ごとに制作しています。今回授業を行うのは庄倉健士(しょうくらけんじ)先生です。卒業式の展示に向けた10か月にわたる書写の授業を取材しました。
6月
・卒業制作の取り組みについて見通しを持つ。
・卒業を迎えるにあたり、家族に伝えたい自分の思いを整理する。
・思いを伝えるのに最もふさわしい言葉や書体を決め、スライドにまとめる。
9月
・生徒が決めた文字を、講師である地域の書道家が書き、それを見本として生徒が半紙に練習する。
10月
・9月に書いた半紙をもとに、文字に込めた家族への思いを改めて振り返り、伝えたい思いがよりよく伝わる効果的な表現の工夫について交流する。
1・2月
・三六紙を用いて、学級ごとに作品を制作する。
※三六紙とは:三尺×六尺(900mm×1800mm)の書道画仙紙のこと。
・各生徒の作品に美術の授業で作成した落款印を押す。
3月
・卒業式会場に、各学級の共同作品を展示する。
単元名は「思いを文字で表そう」(東京書籍「新しい書写」p.91)です。
授業の大まかな流れは次のようになります。
卒業式の日に家族に伝えたい思いについて、その思いを効果的に伝えることができる書体や表現の工夫を考える。
身近にある毛筆文字例(飲食店の看板、大河ドラマのタイトル文字など)をスライドで示し、それぞれの書体の特徴や醸し出す雰囲気を想像します。
これまでの家族とのエピソードや印象的な出来事を思い出し、花言葉などを調べながら、自分の思いを表現できる言葉を探します。
言葉が決まったら、書体や表現の工夫を考えます。
選んだ言葉・書体・込めた思い・表現の工夫などをスライドにまとめていきます。
お互いのプレゼンテーションから、制作の工夫やその効果について共有し、自分の作品を再考する。
選んだ言葉やそこに込めた思い、それを表現するための工夫について、スライドを使って説明し、アドバイスし合います。
伝えたい思いをよりよく伝えるために、書体や文字の大きさ、太さ、筆勢などの効果的な表現を意識して文字を書く。


特別非常勤講師の山澤重美(やまざわしげみ)先生に書いていただいた見本を受け取り、練習に入ります。
山澤先生は米子市在住の書道家で、各学年の書写の授業のサポートに入っていただいています。
作品を完成させ、自分の思いを効果的に伝えるために工夫した表現について整理する。


半紙に練習した文字を書き、いちど書写作品を完成させます。
これまでに作ってきたスライドに、作品の写真画像を貼り付けます。
自分が選んだ文字、表現の工夫、書いた書写作品をまとめたスライドが完成します。
完成した作品を紹介し合い、思いを表現するのに効果的な技法についてまとめる。
班ごとにスライドを使って、自分が書いた書写作品の紹介を行います。
クラス全体でも作品紹介を行いました。
書写で身に付けた力を生かして、自分の思いを三六紙に効果的に表現する。


いよいよ卒業制作のための三六紙に清書していきます。
美術の授業で製作した落款印を押して完成です。
卒業式会場に作品を掲示しました。
作品の横には、生徒たちが文字に込めた思いも掲示しています。多くの保護者にも見ていただき、ふだんは言えないような家族に対する気持ちを知ってもらうきっかけになったようです。また、校区の公民館や地域の祭りなどにも展示し、地域のかたがたにも淀江中学校3年生の取り組みを見ていただくそうです。
庄倉先生
Q 授業で意識されたことはどんなことでしょうか?
中学校3年間の書写学習の集大成として、自分の思いを表現するために、既習事項をどのように生かすかを考えました。また、発展的に書道への関心を高めることを意識し、書体や文字の大きさ、太さ、筆勢などを工夫することで、自分の思いをより明確に文字で表現することを大切に、授業づくりを行いました。なお、本中学校区では「探究力」「説明力」の育成を基盤とした授業展開や、ICTを活用した授業づくりの研究を推進しており、今単元においても、探究の場面や探究したことをアウトプットする機会、さまざまな場面でICT機器を活用する場を積極的に取り入れました。
Q 書写に苦手意識を持つ生徒はいませんか?
1年生の頃は、書写の授業に苦手意識を持ったり、自分が書いたものを他の人に見せることを嫌がったりする生徒もいました。しかし、学年が進むにつれ、支え合い、学び合う中で、仲間と共に自らを高めていくことの楽しさに気づきました。3年生になってからは、書写の授業に積極的に取り組めるようになりました。また、今回の卒業制作に向けた取り組みでは、6月に自分で決めた言葉について約10か月かけて、効果的な工夫を考えたり練習したりしてきました。生徒たちにとって特別な「自分だけの作品」、そして「自分たちだけの作品」になったことも、書写の授業に前向きに取り組めた要因だと思います。なお、一発本番で三六紙に清書するときに、自分の思うように書けなくて悔しがる姿がとても印象的でした。
Q ふだんの授業で心がけていることはどのようなことですか?
書写の授業だけでなく国語の授業でも同じですが、生徒どうしの関わりの中で新たな発見や疑問が生まれるように、発問等を工夫しています。また、話し合いの場面において、仲間の考えや意見を大切にする雰囲気を作ることで、自分の意見を安心して伝えることができる環境づくりを大切にしました。