ICT実践 全ての生徒にとって、対話的で読みが深まる授業づくりを

2025.4.23

ICT実践

全ての生徒にとって、対話的で読みが深まる授業づくりを

大山宏樹(姫路市立山陽中学校教諭)

「一人一台端末」時代となった今、改めてICTの活用について考えてみませんか? 当コーナーでは各地のICT実践を中心に、デジタルを活用した授業づくりについて考えてみたいと思います。今回は、兵庫県姫路市立山陽中学校のおおやまひろ先生による実践を取り上げます。

はじめに

「字のない葉書」は、「あれから三十一年」を経て大人になった「私」が、「父」のことを回想して書いた随筆です。「中学校学習指導要領(平成29年告示)解説 国語編」では、随筆は「人間や自然などについての書き手の考えなどが、様々な描写を用いて豊かに表現されている」文章だと説明されています。

この特性を踏まえて授業を構想したときに、「字のない葉書」に見られる構成や展開、表現には、「父」をどのような人物として描こうとする作者の意図があるかを考える授業、つまり作者の視点に立って作品を分析的に読むような授業が効果的であると考えました。そこで、「作者へのインタビュー記事を書く」という言語活動を設定しました。


ICTを活用した授業の実際

(1)対象

第2学年 40名

(2)単元名(教材名)

「字のない葉書」向田邦子(令和3年度版『新しい国語 2』東京書籍)

(3)単元の目標

・情報と情報との関係の様々な表し方を理解し使うことができる。〔知識及び技能〕(2)イ

・文章の構成や論理の展開、表現の効果について考えることができる。〔思考力、判断力、表現力等〕C(1)エ

・言葉がもつ価値を認識するとともに、読書を生活に役立て、我が国の言語文化を大切にして、思いや考えを伝え合おうとする。「学びに向かう力、人間性等」

(4)指導計画

学習活動

1

○文章を読む。

○それぞれが注目したこと、疑問を持ったこと、よく考えてみたいことなどを共有する。

2

○第1時に選んだ学習課題について、グループで話し合う。

3~5

○インタビュー記事を書く。

○各時の終盤にインタビュー記事を読み合い、「作者の回答」が適切であるかを考え、コメントを付ける。
※構成、展開、表現の効果について捉えた内容が妥当であるかを検討する。

○必要に応じて、インタビュー記事に加筆修正をする。

6

○学習を通して感じた「随筆の読み方のポイント」をまとめる。

(5)活動の具体

1.それぞれの着眼点を共有し、自ら学習課題を設定する。

第1時では、それぞれが注目したことや疑問を持ったことなどを、初読後すぐに共有します。これにより、自身が目を留めなかった描写へと意識を向けたり、関連づけられそうな要素を見いだしたりと、目のつけどころに広がりが生まれます。

ICT活用のポイント

Google Jamboard()の共同編集を用いて、クラス全員で気づきや疑問を出し合います。そのシートを生徒それぞれがダウンロードし、必要に応じて色や配置を変えて、情報を整理します。そのうえで特に考えたい話題を学習課題として設定することで、意欲的に解決へ向かうことができます。
以下に示す生徒Aは、内容によってまとまりを作り、それらを関連づけて、解決したい課題を設定していることが分かります。

情報を整理する(生徒A) 情報を整理する(生徒A)

2.それぞれの学習課題について、グループで話し合う。

インタビュー記事を書き始める前にグループ活動を行い、それぞれが持つ疑問について考えます。他者と話し合うことで、自分の課題と関わりがありそうなことを発見したり、新たな見方に触れたりすることができ、自分の解釈について考え直す契機となります。

以下に示す生徒Bは、構成に目を向け、「手紙」も「葉書」もなくなったことを書いた意図を解釈しようとしています。ただし、生徒Bはこの時点ではまだ「手紙」と「葉書」を同じレベルで捉えていたため、第3時以降には両者の違いを考えたり、「手紙→葉書」という順序で述べられている理由を考えたりするよう促しました。

学習課題を設定し、解釈をつくり始める(生徒B) 学習課題を設定し、解釈をつくり始める(生徒B)

3.インタビュー記事を書き、読み合ってコメントを付ける。
ICT活用のポイント

ICTを活用してインタビュー記事を書くことで、生徒どうしおよび教師からの助言や指導をリアルタイムに行えるようにします。言語活動の過程で、生徒どうしでインタビュー記事を読み合い、コメントを付けることによって、書き手も読み手も、記事の内容の妥当性について立ち止まって考え、再思考が促されます。さらに教師は、各生徒の思考過程や進捗状況を見取り、読み深めるための着眼点を考えて、すぐに効果的な助言や指導をすることができます。これらのアプローチによって、生徒は何度も文章へ立ち返って検討を重ね、読みを深めていくことになります。

具体的には、教師がGoogleドキュメントを用いて作成したテンプレートを、生徒それぞれがダウンロードします。インタビュー記事の執筆も、生徒どうしおよび教師からのコメントも、そこで行うようにします。

用意したテンプレート(Googleドキュメント) 用意したテンプレート(Googleドキュメント)

読み合う前に、自分が書いたインタビュー記事上に、「うまく解釈ができたからぜひ読んでほしいところ」を赤で、「疑問やもやもやが残っているところ」を青で、それぞれマークしておきます。すると、読み手はおのずとマークされた箇所を中心に見てコメントを付けるため、書き手にとって有益な情報が集まります。
さらに、次時までに教師がコメントを付けておきます。読み深めるためのヒントや手がかりにしてほしいことを見つけ、次時に考えるとよい点として提案します。

以下に示す生徒Cは、場面によって「父」が与える印象に差をつけている理由を説明しています。ほかの生徒は、「根拠がたくさんあって」と共感を示したり、「妹へのすごい愛情が感じられたということか」と確認を求めたりするコメントを付けました。また教師は、複数の情報の関連づけができている点を評価しつつ、かぼちゃの描写に関する説明が不足していることを指摘しました。そこから生徒Cは、本文を読み返し、新たに「小さいかぼちゃ」という描写が持つ意味に着目しながら、インタビュー記事に加筆をしていました。

記事(生徒C)とコメント 記事(生徒C)とコメント

また、以下に示す生徒Dは、インタビュー記事の完成版を見ると、登場人物の呼称を「妹」と表現しているところに焦点を当てています。本名で表現した場合と比較しながら、その意図を解釈できています。さらに、文章の構成にも注目し、前半が「父」の悪いところを中心に書かれているのは、後半に見せる「父」の愛情を強調するためだと解釈していました。

記事の完成例(生徒D) 記事の完成例(生徒D)

4.「随筆の読み方のポイント」をまとめる。

最後に、学習を通して感じた「随筆の読み方のポイント」をまとめました。生徒それぞれにどのような学びがあったかを自覚させることがねらいです。


終わりに

この実践例では、生徒一人一人が「字のない葉書」に施された構成や展開、表現の効果について粘り強く考え、読み深めることにつなげられたと感じます。生徒の姿を見ていると「主体的・対話的で深い学び」や「協働的な学び」が生まれており、本学習におけるICTの活用場面が効果的であったといえるでしょう。

また、「インタビュー記事を書く」という言語活動の設定でありながら、単元の目標である「読むこと」の学習に専念できたのも、ICTによる効果が大きいと感じました。字を書くことに困難がある生徒が一定数いる中で、読み書き自体の負担が減り、インタビュー記事やコメントの内容を理解することに集中できていました。さらに、執筆やコメントの記入を自分のペースで行えたことも、ICTの活用の産物です。

私たちは、授業の中に生徒一人一人の居場所をつくれるかが勝負です。誰もが前向きになれる、そして学びのある授業づくりを目指すうえで、ICTがもたらす効果は大きいと感じているところです。

^Google Jamboardは、2024年12月をもって提供を終了しています。
Google Jamboard、Google ドキュメントは、Google LLCの商標です。

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