
2025.4.9
学力調査を考える
全国学力・学習状況調査において、2025年度からCBTの導入が決まっています。今回は、国語におけるCBTの展望について考えます。
CBT(=Computer Based Testing)については、令和7年4月実施の全国学力・学習状況調査において、中学校理科で実施されるということで興味を持っているかたも多いと思います。全国学力・学習状況調査では、令和8年には中学校英語が、令和9年からは国語や算数・数学でも、PBT(=Paper Based Testing)から、CBTに移行する方針が打ち出されています。
ここでは、国語のCBTが今後どのように進化していくか、その展望を考えていきたいと思います。
2024年10月に全国学力・学習状況調査CBTの中学校理科のサンプル問題が公開されました。その中で、動画を用いた問題が採用されていました。
全国学力・学習状況調査CBTにおける動画を用いた出題例
(全国学力・学習状況調査CBT中学校理科サンプル問題より)
国語でも、今後は動画を用いた問い方が採用されていくことと推測されます。国語の場合では、特に「話すこと・聞くこと」領域を問う際に動画を用いることで、PBTでは問えなかった能力を、従来よりも実践的な設定で、問うことができるようになります。
これまでの全国学力・学習状況調査において、「話すこと・聞くこと」領域が出題されるときには、動画や音声はなく、文字のみでの出題でした。東京書籍の「標準学力調査PBT」では、CDによる音声を聞かせたうえで、紙の問題用紙の問題を解かせる出題はしていましたが、動画は用いていませんでした。
今後、動画を用いた出題が可能になると、実際に音声を聞いて答える問題や、相手の反応を踏まえて話したり、資料や機器を用いて話したりする問題を、より現実の場面に即した形で問うことができるようになります。動画にすることで、より本質的な「話すこと・聞くこと」領域の問いが可能になります。
これまでの全国学力・学習状況調査でも、PBTではありながらも、場面設定としてICTを活用しているような問いや、相手の反応を踏まえて話すような問いが出題されています。


全国学力・学習状況調査における「ICTを活用している場面設定」の出題例
(令和4年度全国学力・学習状況調査中学校国語大問1より)
全国学力・学習状況調査における「相手の反応を踏まえて話す」の出題例
(平成27年度全国学力・学習状況調査中学校国語A大問1より)
今後はこのような設定の問題が、実際に動画として出題されることが考えられます。
また、将来的には、国語の「話すこと」について、ヘッドセットを用いるなどして、実際に話して解答する形式も採用されていく可能性もあります。令和5年には全国学力・学習状況調査中学校英語で「話すこと」の調査が行われました。国語についても、同様の形式が取り入れられていくのかもしれません。
今後、国語の授業の中でもICTがより活用されるようになっていったとき、そうした授業で身についた力を、CBTではより実践的に問いやすくなります。
これまでも、全国学力・学習状況調査では、文章と文章、文章と資料を読み比べさせるような出題はされてきました。こうした形式はCBTでも出題されることが考えられます。
例えば、2018年に「OECD生徒の学習到達度調査(PISA)」が行われました。このときの調査では、「読解力」について、CBTを用いて実施されています。PISAの問題では、タブ切り替えによって、複数の文章を切り替えながら関連付けて読ませる問題が出題されていました。PISAで出題されたこのような文章比較の形式は、今後の全国学力・学習状況調査CBTにおいても出題されうるものです。
PISAにおける「文章比較」の出題例
(PISA 2018年調査問題例 コンピュータ使用型 読解力問題より)
現代社会では、インターネットやSNSなどでさまざまな形式の情報に出合うことでしょう。その際、文章の形式がさまざまであっても、正確に各文章の要旨を捉え、さまざまな立場や考え方を意識したうえで、自分の考えを形成していくことが重要となります。CBTは、実践的にそうした力を測りやすいと言えるのかもしれません。
本来、国語で培った能力は、どのような場面でも活用されるべきものです。しかし学力調査で「話すこと・聞くこと」「書くこと」「読むこと」などを問うときには、一つのテーマに対して問うていました。しかし、CBT化することで、生徒の考え方に合わせてコースが分岐していくような出題も可能になるかもしれません。例えば数学で、一つの問題に対して、複数の解法が存在する場合があります。Aの解法を用いたい生徒はAコース、Bの解法を用いたい生徒はBコースなどと分岐させ、それぞれの考え方に合わせて問題を解くことができるかを問うことも可能になります。
国語においても、例えば「書くこと」領域の中で、ある生徒は「歴史分野」についてレポートを書きたいと思い、ある生徒は「科学分野」についてレポートを書きたいと思うかもしれません。「歴史分野」でも「科学分野」でも、実生活の中では本来はどのようなテーマでもよいわけで、どのようなテーマであっても、「どう書くか」といった「書くこと」領域で身につけた力が問えればよいのです。CBTの機能によって、生徒の考え方の多様性を受け入れることができるようになるかもしれません。
CBTにおける分岐問題のイメージ図
国語の学力調査がCBTになることで具体的にどう変わるか、三つのことを取り上げてみました。今後も技術の進歩とともに、新たな機能が生まれていくでしょう。CBTの特性を生かすことで、これまでも測れた力にプラスして、これまでは測れなかった力も測ることができるようになります。また、実生活や、多様な考え方に即した出題も可能になるかもしれません。国語は文字言語の教科であるので、CBTとの相性がよくないのではないか、と思われるかもしれませんが、CBTの特性を生かすことで、国語の学力調査を進化させていくことができるのです。
なお、東京書籍の「標準学力調査CBT」はこうしたCBTの動向をいち早く取り入れています。また、東京書籍では、CBTをもっと有効活用するための情報誌「TEST QUEST」を創刊しました。こちらでは、さまざまな先生に、CBTや昨今の学力調査の動向について、ご執筆いただいています。ぜひ併せてお読みください。