こくごレポート 第6回 大阪府東大阪市立弥刀小学校 〜伝え合う力でつながろう〜

2025.3.19

こくごレポート

第6回 大阪府東大阪市立弥刀小学校
〜伝え合う力でつながろう〜

こくごスタジオ編集部

コトハ今回のこくごレポートは、東大阪市立弥刀(みと)小学校を取材しました!
大阪府「スクール・エンパワーメント推進事業」で国語の授業づくりモデル小学校に指定され、国語を中心とした研究に力を入れている学校です!

弥刀小学校ってどんな学校?

弥刀小学校のある東大阪市は、大阪府の東側に位置しています。製造業が盛んな「モノづくりのまち」、全国高校ラグビーの聖地「花園ラグビー場」がある「ラグビーのまち」として有名です。

弥刀小学校は明治7年(1874年)に創立した歴史のある学校です!
2024年には150周年を迎え、地域の人たちと一緒に記念式典も行いました。

東大阪市立弥刀小学校 東大阪市立弥刀小学校

150周年オリジナルキャラクターの「みとっこくん」 150周年オリジナルキャラクターの「みとっこくん」


授業スタート!

お邪魔したのは、6年1組。クラス人数は22人で、授業者は担任の塩﨑勇喜(しおざきゆうき)先生です。
今学習している単元は、説明文の「『永遠のごみ』プラスチック」(東京書籍)。この日は、第6時に当たる授業です。

国語の授業は「読み上げ漢字」からスタートします。
「読み上げ漢字」とは、各自でワークシートの漢字を読み上げていく活動です。ワークシートには教科書に登場する漢字がすべて書かれています。読み終わったら「はい!」と挙手し、先生にタイムを教えてもらいます。
個人で取り組んだ後は、ペアで聴き合い、「全部あってるよ」「何個かとんでるけど」と互いに気づきを伝え合います。


「自分めあて」をもつ

単元のめあては「複数の情報を関連づけて読み、プラスチックごみの問題に対する考えを伝えよう」、本時のめあては「資料①と②を読み比べよう」です。ここでいう資料とは、本文の後に掲載されている教材のことで、生分解性プラスチックという新しい技術に関しての資料①と、使った漁網がかばんに生まれ変わるという資源の有効利用に関する資料②が掲載されています。
単元と本時のめあてを確認したら、一人一人の「自分めあて」を立てていきます。「自分めあて」を考えることで、教材を「自分事」として捉える力を養います。

<本時の自分めあて一例>

・資料①②両方の良さを見つける。

・「資料①にあって②にはないもの」を比べる。

・「地球にとって良いのはどちらか」という視点で考える。

「単元のめあて」(右)「本時のめあて」(左) 「単元のめあて」(右)「本時のめあて」(左)


各自で音読して整理する

資料①と資料②を音読します。先生が「後で分かったことを聞くからね」と読む視点の意識を促すと、子どもたちは教科書に線を引きながら読んでいました。
音読が終わると、「それぞれの資料に何が書かれていたか」を整理します。整理方法は自由で、ノートに考えを書く子や、ペアで話し合って考えを整理する子もいました。

自分の考えや気づきを書きこんだ教科書 自分の考えや気づきを書きこんだ教科書

コトハ教科書に線を引くことについて、先生からの指示はありません。
「分かったことに線を引く」「短く線を引く」「言葉に注目して線を引く」という活動を、1年生から積み重ね、各自が必要に応じて実践しているそうです。


「大きな発問」

みんなが参加しやすい「大きな発問」から話し合いが始まります。今回の「大きな発問」は「資料①②から分かることを教えてください」です。
一斉に手が挙がり、発表者が発言をするときは、クラス全体で発表者に体を向けて聞き入ります。

<子どもたちの発言>

・資料①②にはメリットとデメリットの両方が書かれている。「生分解性プラスチックは分解できても魔法ではない」と本文にもある。

・資料②には、とびらのカメの写真と関連づけて、漁網をカバンに変えられることが書かれている。

・資料①には、「生分解性プラスチックの分解の仕方」がまとめられていて、資料②には「漁網がカバンに生まれ変わるリサイクル」について書かれている。

クラスの伝え合いの様子 クラスの伝え合いの様子

学力向上支援コーディネーターの岡本先生も必要に応じて支援に入る 学力向上支援コーディネーターの岡本先生も必要に応じて支援に入る


「深める発問」

2つ目の発問は「深める発問」。「みんなだったら①と②どっちをおすすめしたい?」という発問を受けて、各自で5分間考えてからペアで話し合い、ノートに自分の意見をまとめます。
子どもたちは勢いよく意見を書いていましたが、塩﨑先生からは「書いたことはメモ程度に」と助言がありました。書いたことをそのまま発表するのではなく、対話の中で意見を変えながら伝え合うことを目指しているそうです。


「メリットとデメリット」か、「有効活用」か

6年1組の伝え合いは、めまぐるしく展開します。はじめは、資料①②それぞれに書かれた内容の「メリットとデメリット」に着目する意見が出ていましたが、途中で「どのように有効活用するか」という違う視点も登場。議論はどんどん深まっていきました。

<発言例>

・資料②にはカバンを買ってくれる人がいないとプラスチックがなくならないというデメリットがある。人の心任せになってしまう。

・資料①にはメリットとデメリットの両方が書いてあるから、①の方が良い。マイクロプラスチックが排出されないよう条件を満たせば、デメリットは解消できる。

・資料①の生分解性プラスチックだと、プラスチックが減ってしまう。教科書にも「プラスチックは生活に欠かせないもの」とあるから、資料②が良い。

・資料①で、プラスチックの「有効活用」に注目した。生分解性プラスチックは、 肥料で植物を育てて、CO2を減らすこともできるので一石二鳥になると思う。

発言を集約した板書 発言を集約した板書


振り返りにタイトルをつける

自分の考えを伝え合う時間が熱を帯びたまま、授業はあっという間に終わりの時間を迎えました。授業の振り返りとして「これからの未来に大切な方法としてどちらが良いか」をノートにまとめます。子どもたちのノートには、今日の発問や振り返りについての考えが溢れんばかりに書かれていました。

子どもたちのノート 子どもたちのノート

本日の板書 本日の板書


弥刀小学校の先生にインタビュー

左:岡本美穂先生、中央:横田幸子校長、右:塩﨑勇喜先生 左:岡本美穂先生、中央:横田幸子校長、右:塩﨑勇喜先生

授業者:塩﨑勇喜先生

Q 本日の授業のねらいは何でしょうか?

本時のめあては「資料①と資料②を関係づけて読む」でしたが、できれば「本文とも関係づけられる」子どもがひとりでも多く出てくれば良いなという思いで、本日の授業に臨みました。また、自分の考えをノートに書く力がついてきたので、書いた通りに発表するのではなく、人の意見を聞いて考えを変えながら交流することを次の課題としています。

Q 子どもたちが自分たちで交流を進めている姿がとても印象的でした。

子どもたちに任せる交流は、国語だけでなく、すべての教科で実践しています。
「まだあまり発言していない子が手を挙げていたら、意見をきいてみようかな」という視点をもつなど、みんなで授業をつくっていく意識を大切にしています。
特別活動として「クラス会議」を毎週実施していることも、授業での交流の姿につながっていると思います。

Q 国語の授業で心がけていることは何ですか?

「大きな発問」と「深める発問」のスタイルを意識しています。「大きな発問」は、誰でも参加しやすい、間口の広い発問です。「深める発問」は、子どもの発言に合わせて柔軟に変えています。教師が想定していない意見が出たりすると、それに応じて発問を変えることもあります!

学力向上支援コーディネーター:岡本美穂(おかもとみほ)先生

Q 「国語の授業づくりモデル校」における「学力向上支援コーディネーター」の 役割について教えてください。

自分で授業を行うことはしませんが、全学年の授業に参加し良い点や改善点があれば言語化して伝え、授業の中で生じる疑問や悩みについては一緒に考えています。また、教職員研修や教材の充実を進めています。

Q 国語の校内研究をどのように進められてますか?

研究主題は「伝え合う力でつながろう」です。当校は先生が互いの授業を見合う機会が非常に多く、特色ある授業が自然と生まれています。4月の研修開きで、「学力向上の道しるべ」という冊子や基礎実態調査(4・7・12・2月実施)を基にしながら、各学年の強みや課題を話し合う。そして5月に全職員公開授業を行いそれぞれの授業を見学し年度内に6回の研究授業と研修を行っています。互いの授業を見るのが当たり前の雰囲気なので、良い授業を共有しながら授業力向上を図っています。

Q 子どもたちの国語力を育むために、どのような取り組みをされていますか?

「クラス会議」

上越教育大学の赤坂真二先生にも校内研修を依頼して「クラス会議」という取り組みを行っています。
「クラス会議ボックス」に自分の困ったことや、みんなで話し合いたいことを入れて、みんなで話し合いを行ってきました。「クラス会議」は、国語における「話す・聞く」の実践の場になっています。

「百マス作文」

「条件づけて書く力」を課題として捉えており、朝学の時間を使って、定期的に「百マス作文」に取り組んでいます。10分で百マスの作文にチャレンジして、書いたものを五・七・五にまとめる活動です。学年の実態に応じてテーマを設定。書けない時期や「書くのが面倒だ」と思ってしまう時期もありますが、先生側があきらめずに積み重ねていくことで、書けるようになってきていました。

校長の横田幸子(よこたゆきこ)先生にもお話を伺いました。

弥刀小学校の校風

弥刀小学校の特色ある取り組みは、学校全体がオープンで、教職員が互いの授業を見せ合うなかで自然と広まっていったものです。先生が互いに「見に来てくださいね」と時間割を示すことで、学年や学級が違っても、子どもたちのために授業を見に行こうという意識が生まれています。

キーワードは「自分事」

すべての教育活動において、先生も子どももみんなが「自分事」として考え、一丸となって向き合うことが、子どもたちの成長につながっていると考えています。
弥刀小学校の先生は、子どもや授業のことについて、本当によく話していて、放課後も話がつきないくらいです。そのような先生の雰囲気を、子どもたちも敏感にキャッチしますから、「先生たちが見てくれている」と感じ、安心して学校生活を送ることができるのです。

“Chance” “Challenge” “Create” を大切に

学校には日々ドラマがあって、もちろんピンチに見舞われることもあります。その中で、いろいろなことを「チャンス」にし、「チャレンジ」して、みんなで弥刀小学校を「クリエイト」することを大切にしてきました。
先生方がいろんな授業を見て、子どもの育っている姿を実感したときに、「自分もやってみようかな」と思うのです。
子どもも先生もチャレンジできる環境を整え、みんなで弥刀小を創っています。みんな「弥刀小が大好き」という思いが学校の推進力になっています。

(取材日:2024年12月)

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