こくごレポート 第4回 和歌山市立伏虎義務教育学校 〜私たちが受け取る魯迅からのメッセージ〜

2024.11.20

こくごレポート

第4回 和歌山市立伏虎義務教育学校
〜私たちが受け取る魯迅からのメッセージ〜

こくごスタジオ編集部

コトハ今回取材したのは和歌山県の和歌山市立伏虎義務教育学校!「心豊かで、自ら学び、夢と希望を持ってたくましく生きる人間の育成」の実現に向けて取り組む小中一貫校です。「こくごレポート」で中学校を見学するのは初めてだよ。どんな授業をしているのかな。わくわくしながら見学に行ってきました!

学校の紹介

和歌山市立伏虎義務教育学校は、和歌山県内唯一の小中一貫校として平成29年に開校しました。和歌山市の中心に位置し、学校のすぐ近くには 学校名の由来ともなった「和歌山城」、別名「虎伏城」がそびえています。

和歌山市のシンボル和歌山城 和歌山市のシンボル和歌山城

義務教育学校である特色を活かし、学習習慣の定着に向け基礎となる安定した情緒を育む「基礎・基本定着期」(1~4 年)、 一部教科担任制を導入し、専門性の高い学習を実施する「充実期」(5~7 年)、自己実現に向けた個性や能力の伸長を図る「発展期」(8・9 年) と9年間を通した教育活動を行っています。

和歌山市立伏虎義務教育学校 和歌山市立伏虎義務教育学校


今回のクラスは…

見学したのは9年2組。中学校3年生です。学級目標は「Just Do It ! 切磋琢磨し“Dream”を“True”に」です。「切磋琢磨」にふさわしく、授業中もお互いの意見を出し合い議論を深めていく学習意欲の高いクラスです。国語の授業を行うのは、北村凌(きたむらりょう)先生です。


授業スタート

今日の授業は中学校国語の定番教材「故郷」(魯迅)の4時間目。これまでの時間で教材の通読、感想のやりとり、問いの作成をしてきました。北村先生は生徒一人一人が作者のものの見方・考え方を捉え、自分や社会に照らし合わせてそれぞれが考えたことを発信するという言語活動を本単元で設定しています。本時は「単元末に自分の意見を発信するという見通しを持ち、魯迅のものの見方・考え方を捉えることができる問いを選ぼう」を課題とし、「この問いを使えば魯迅のものの見方・考え方に迫れるぞ!」という授業のゴールに向かって学習をします。

授業の導入は、SNSで賛否両論があった投稿を取り上げ、文章には、書き手のものの見方・考え方が出ることを生徒と確認していました。そして物語にも作者のものの見方・考え方が反映されていることをつかむため、前時に生徒それぞれが作った作者の見方・考え方を捉えることができる問い54題をまとめたプリントを使い、みんなで問いの共有をしました。

その後、生徒それぞれが作った問いの内容や意図について、ペアでの話し合いを促します。「ああ、そうか。分かった」「ちょっとこの問いの意図が分からない」など、クラスメートの考えを自分の言葉で説明したり何を訴えたいのかを確認をしたりしています。その後に自分が考えてみたい問いを1〜3つ選び、その選定理由も考えます。

ペアによる話し合い ペアによる話し合い

考えてみたい問いの選定 考えてみたい問いの選定


グループで問いを選別

この後さらに考えを深めるために机を向かい合わせて4〜5人のグループになり、各自が選んだ問いを吟味する話し合いへと移りました。自分が選んだ問いが魯迅のものの見方・考え方に迫ることができるのか、自分がなぜその問いを選んだのか、根拠となる箇所を教科書で示しながら自分の意見を述べていきます。話し合いの中で各グループからは「表現が難しいね」「文章としてのおもしろみがあるよ」「時代背景や心の動きに注目して」「つながりに着目して」「情景描写が心情を表しているよ」「これは比喩的な表現だ」などのキーワードが飛び交っていました。

グループでの話し合い グループでの話し合い

今取り組むことを確認 今取り組むことを確認


グループ発表

グループ討議の後は、それぞれが選別した問いの妥当性について討議した結果の発表です。各グループの代表1名がなぜ自分はその問いを選んだか、グループ内では問いの妥当性が得られたかを説明していきます。その問いで魯迅の見方・考え方につながるか、つながりそうなら◯、つながらないなら✕、結論が出なかったときは△で発表していきます。

黒板のまとめ 黒板のまとめ

各グループの発表では△がいちばん多い結果となりました。そこで、北村先生は△の問いについてもう一度グループ内で討議を促していました。再び議論が白熱する中、ここで終了のチャイムが鳴りました。次回は本時で選んだ問いをさらに考えていくことを確認して授業を終えました。


北村先生にインタビュー

北村凌(きたむらりょう)先生 北村凌(きたむらりょう)先生

Q 「故郷」は現代の生徒たちにとっては時代背景や舞台設定が複雑なことからとっつきにくい教材だと思います。今日の授業では、生徒の皆さんは、教材の時代背景や魯迅について理解して話し合いにものすごく集中していました。何か工夫はありましたか?

単元の導入で少しでも魯迅を身近に感じてもらいたいため、和歌山市と友好都市提携を結んでいる済南市へ、今年私が行ったときの話をしました。中国というと自然豊かなイメージがありますが、済南市はハイテク産業開発区で非常に発展した都市でした。その様子と、中国の近代化を文学で説いた人物が魯迅であるというエピソードを話すことで生徒たちに興味を持ってもらえ、物語へいざなうことができたなと感じています。

Q 本日の授業の「ねらい」や単元を通して「つけたい力」は何でしょうか?

教師からの発問で考えるのではなく、自らの問いによって教材を読み深め、学びを自己で進めていくための力を養いたいと考え、授業の一部分では単元内自由進度学習のような形を取り入れてきました。これまで何度か自分たちで学びを進める活動に取り組んできましたが、どのように学びを進めて行けばよいのか判断する力がまだ十分に身についていないと感じています。特に、問いを立てる力、問いを選ぶ力、自分たちで課題を解決する力に課題があると感じていました。そこでこの教材のねらいとして、自分で問いを立て解決していく力を身につけてほしいと考え、自分で問いを立てるだけでなく、どの問いを選ぶべきかをグループで吟味する時間を単元計画に取り入れました。「自分の考えを発信する」という単元のゴールを見通して学習を進められるよう、単元計画を立てています。

Q 今日の授業を振り返って

今日の授業は自ら問いを立てる力を育むことを意識させました。要所を押さえて見通しを立てるのは難しかったみたいですが、生徒たちはよく話し合いを重ねてくれていました。一方、話し合いを生徒たちの主体性に任せた場合、どこまでこちらが支援するかが課題であると感じました。
今後は、内容整理や、ものの見方・考え方についても生徒が自発的に行えるようなクラスになるよう手立てをしていきたいと考えています。魯迅が文学によって伝えたかったことは何なのか。これを考え、筆者のものの見方・考え方を現代の私たちに当てはめることで、自分の生き方や社会の在り方について考えさせることができるのではないでしょうか。
中学3年生は多感で、自分の生き方を考える時期でもあります。自分の生き方や社会との関わり方を考えるときに、単元の学びや読書を通して捉えたものの見方や考え方を、自分の今後や社会について考える力として身につけてほしいと願っています。

(取材日:2024年10月)

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