こくごレポート 第3回 板橋区立紅梅小学校 ~自分の思いや考えを文字言語で表現できる児童の育成~

2024.10.16

こくごレポート

第3回 板橋区立紅梅小学校
~自分の思いや考えを文字言語で表現できる児童の育成~

こくごスタジオ編集部

コトハ今回取材したのは東京都の板橋区立紅梅小学校!
思いや考えを文字言語で表現できる児童の育成を目指しているみたいです。
早速見学に行ってきました!

学校の紹介

板橋区立紅梅小学校は、明治7年に開校した歴史と伝統のある学校です。令和6年度には創立150周年を迎え、11月には150周年記念式典も予定されています。

もともと学校の周りは「徳丸田んぼ」と呼ばれ、たくさんの米が生産されていたほか、綿、藍、桑、茶、大根などの畑も広がっていました。農業が盛んな地域であることから、紅梅小学校では、田植えや茶摘みをしたり、大根やジャガイモなど地域の特産野菜と関わったりすることを通して、農業文化に触れ、地域のかたがたと交流をしています。その中で、人と人との関わりを大切に思う心や、自分の暮らす地域のよさを知って、育ててくれた土地に感謝する心の育成を目指しています。

学校の正門 学校の正門

150周年を迎える 150周年を迎える


今回のクラスは…

お邪魔したのは6年3組。学級目標は「努力夢現(むげん)」。努力をして夢を現実にするという、児童がつくった造語だそうです。日頃から言葉をつくるのが大好きで、明るく素直なクラスです。

この日は多くの先生がたも授業を参観されていました。そのような中でも積極的に発言をする子どもたちの姿から、日頃から国語の授業を楽しみにしていることが感じられました。
授業を行うのは、担任の冨永 菜緒(とみなが なお)先生です。

授業の導入 授業の導入


授業スタート!

学習しているのは、東京書籍の6年生に掲載されている「風切るつばさ」。本時のめあては「2場面を読み、人物の関係をまとめよう」です。まずは、学級全体で前時までの学習を掲示物や手元の振り返りシートを確認しながら振り返ります。

振り返りシートを確認 振り返りシートを確認

黒板の単元名を見てみると、「危友鶴(きゆうづる)相関図」という不思議な名前の相関図にまとめていくようです。本教材の登場人物等をモチーフに、単元の学習を通して「危」=危険なキツネ、「友」=クルルとカララの関係、「鶴」=仲間の群れの鶴の関係を調べていきたいという意味を込めて「危友鶴相関図」と子どもたちが名付けたそうです。


サイドラインを基に、相関図にまとめる

めあての確認と音読を終えると、ワークシートを用意します。人物の関係をまとめていくために、登場人物の様子や行動、心情が分かる部分に色分けをしてサイドラインを引いていきます。

サイドラインを引く サイドラインを引く

その後、どこにラインを引いたのか、ペアで確認し、自分の考えを広げたり、深めたりしていきます。

ペアでの活動 ペアでの活動

そして、引いたサイドラインを基に、2場面の登場人物の相関図をまとめていきます。相関図にまとめる際には、なぜそう考えたのか、根拠となる言葉や叙述が分かるようにしていきます。言葉はもちろん、登場人物との距離感といった配置にもこだわりをもって、図にまとめている姿が印象的でした。

相関図にまとめる 相関図にまとめる


考えたことを3人組で確認

ペアでの取り組みの次は、3人組での話し合い活動。活動を前に冨永先生から、共有では自分の考えを広げたり深めたりすることが目的であることが伝えられます。

3人組での活動 3人組での活動

席を3人組の形にすると、すぐに教室中で話し合いがスタートします。話し合いを深めるためのヒントカードを手元で確認しながら活発な活動が続き、あっという間に終わりのタイマーが鳴ってしまった気がしました。

話し合いカード 話し合いカード

子どもたちは、考えをしっかり伝えることはもちろん、「どうして?」や「なんで?」といった理由を確認する問いかけや、「なるほどね!」「それは思いつかなかった!」のような相づちも多く見られ、対話が深まっていくことを楽しんでいる印象を受けました。


クラス全体で考えを深める

3人組での話し合いの後は、クラス全体で考えを共有していきます。先生は司会役となって、児童主体で共有が始まります。本文の番号の順番に、「〇番のこういった言葉から、誰から誰に対してこういう気持ちだと思います。同じ番号で考えた人はいますか。」と、発言した児童から次の児童へ、途絶えることなく話し合いが進みます。

学級全体で共有する 学級全体で共有する

ときおり、注目させたい叙述や、もっと深めさせたい発言に対して、冨永先生が「なんでそう考えたの?」「同じ人はいるかな?」「〇〇ってどういうことかな?」といった発問を与え、話し合いをさらに活発にしていきました。「そうか」「なるほど」「思いつかなかった」「たしかに」とついつい漏れてしまう感嘆の言葉と表情がとても印象的でした。

板書の様子 板書の様子

最後に記入する振り返りシートを書く鉛筆も止まらず、「できた」「わかった」という振り返りを書いている児童が多く、本時の授業が児童の力になっていることを強く感じました。

授業の振り返り 授業の振り返り


冨永先生、小宮校長先生にインタビュー

冨永先生 冨永先生

Q 本日の「授業のねらい」「つけたい力」は?

今回の授業では、言葉に着目して心情や気持ちを読み取ることができるようになってほしいという思いがありました。このクラスはとても素直な子どもたちなのですが、あっさりしているところもあり、文章をさらっと読んでしまい、深い学びになっていかないのではないかと感じることがありました。そこで、言葉や文章といった叙述に着目して読むことができるように、上段の教科書本文を基に、下段に人物相関図にまとめていくワークシートを用意し、言葉に丸をつけたり、考えたことを書いたりできるように工夫をしました。

Q ワークシートにまとめたことを共有する話し合いがとても印象的でした。日頃からどのようなことを意識されていますか。

まず、私は子どもたちと話をする際に、相づちやリアクションといった、質問などに対して反応をしてもらうことが嬉しいことを伝えるなど反応への価値づけをしています。子どもが私に話しかけてくる際にも、作業をしながらではなく、自分の手を止めて子どもの顔を見ながら反応するように意識をしています。また、授業では、相手の意見を受け入れるゆとりがある一方で、話し合いが深まらないという課題も感じていました。そこで、朝の時間に、隣の人やトリオ活動の人と、「昨日食べたものでいちばんおいしかったもの」や「昨日見たテレビでおもしろかった内容」といったテーマで話す活動を設けることにしました。話し終わった後のフィードバックで、どのような言葉で相手の意見を受け止めたかや、どのような質問をしたのかなどを確認するようにしたところ、だんだんと話し合いが深まっていったように感じます。

Q 話し合いのヒントカードを手元に置いている子どももいました。

言葉の力を高めていくために、校内研究の一つとして、「語彙力帳」を子どもたちに取り組ませています。具体的には、言葉集めとして、3つの熟語の意味を辞書で調べ、それを使った文章づくりをする活動をしています。また、国語以外でも使用できるように、自らの学びのポイント帳であるという意味を与え、文章の書き方や、理由や考えの書き方などをまとめさせています。話し合いのヒントについても、ポイントの一つとしてまとめたものです。子どもたちはすぐにインターネットで検索をしたがるのですが、語彙を広げるために、国語辞典や類語辞典で調べさせるようにしています。

Q 本時までの授業をふり返って子どもたちの変化はいかがですか?

何度も本文を読んで、根拠を探している姿から、叙述を基に考えることができるようになっていると感じます。ICT機器ではなく、ワークシートにしたことで、子どもの記憶に残っているようにも感じます。

ただ、サイドラインを引く活動では、言葉に着目できている子どもがいる一方、まだ着目する言葉が決定できずに、文章全体にラインを引いてしまう子どももいました。
本来は、もっとピンポイントで言葉に着目をさせたかったのですが、最初に、登場人物の行動や様子、会話や描写といった点に着目するように指導したことで、文章全体に線を引いてしまう子どもがいました。残りの時数の課題として取り組みます。

Q 最後に、「国語の授業」「国語の指導」で大切にしていることを教えてください。

私が教員になりたての頃、実は国語の授業が苦手でした。ただ、自分が苦手だからやらないのではなく、苦手だからこそ、研究に取り組むようになりました。

まずは、自分が楽しみながら、教材の内容を深く理解することを大切にしています。自分が理解しないと子どもに教えられないことはもちろんですが、理解をすれば、子どもにどのように楽しんでもらえるかがわかってきます。

また、子どもの姿をしっかり思い浮かべるようにしています。子どもとともに授業をつくるという気持ちを大切にしています。今では、教材研究をやっていくほどに、国語のおもしろさと難しさを楽しめるようになってきています。

クラスのスローガンである「努力夢現」を先生ご自身が体現されていると感じました。「子どもたちをできるだけ褒めるようにしています!」と、子どもと授業をつくっていくことを楽しんでいることが、授業からも、お話からもとても伝わってきました。

校長の小宮孝之(こみやたかゆき)先生からもメッセージをいただきました。

小宮校長先生 小宮校長先生

学校は、子どもたちに身に付けさせたい資質・能力を明確にし、学習の系統や他教科との関連を図った学習活動を重ね、日常生活の中で活用できる言葉の力を定着させる教育活動を積み重ねていかなければなりません。

このような視点で目の前の子どもと向き合うと、自分の思いや考えを伝えることが苦手な子や、考えを適切な言葉を選んで説明することが苦手な子がいました。「この子たちに、『思いを表現する力』をつけてやりたい」という先生がたの想いから、「自分の思いや考えを文字言語で表現できる児童の育成」という主題を設定して研究活動を始め、今年で3年目になります。
全ての教科、領域において言語活動を取り入れ、伝え合いの授業を行うとともに、将来必要となる確かな表現力(プレゼンテーション能力、コミュニケーション能力)を身に付けさせることを目指しています。

私は「教師の本道は授業である」と考えています。授業で勝負のできる、言い換えれば、授業を通じ児童や保護者の信頼感を高めることができるような高い教育力を修得するというプロ意識と、そのための自分自身の実践的研修手段を持つことが必要です。そのために、校内では、校内研究、OJT研究、若手研修会を組織的に行い、経験と知識などの優れた力を共有化するとともに、それらを継承するシステムを構築しています。

また、先生方には団体や研究会などに入り学んでいくことを勧めています。地区や都道府県などの大きな単位の研究会であれば、自身が異動しても研究を継続することができます。このことに限らず、成功するためには正しい努力を行うことが大切なのです。

冨永先生には、研究主任として、経営方針の実現に向けて、校内研究をリードしてもらっています。日頃から児童一人一人と向き合い、子どもをとても大切にしています。本日の授業でも学級全員が授業に参加していました。児童それぞれが授業への思いをもっていて、授業時間をかけて、複雑な折り方の折り鶴を完成させている児童もいました。その折り鶴の色は、登場人物のカララの色(黒板のマグネット)の色だったので、周りの児童も授業終わりの黒板の板書に貼っていました。先生が自分なりの表現の仕方を認めている。これを自然にできることが、冨永先生の魅力ですね。

黒板に貼られた折り鶴 黒板に貼られた折り鶴

これからも授業を通して集団をつくるとともに、児童が自ら課題を発見し、対話を通して自ら学びを調整しながら、最後まで粘り強く取り組む力を身に付けさせていきたいと思います。

コトハ今回もすばらしい授業を見学することができました!
今回のこくごレポートはここまでです。次は先生の学校にお邪魔するかも!?
それでは次回もお楽しみに!!

(取材日:2024年9月)

授業の指導案はこちらPDF

校内研究計画書はこちらPDF

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