国語教師のための日本語講座 若者言葉を聞いたら?

2024.10.9

国語教師のための日本語講座

若者言葉を聞いたら?

こくごスタジオ編集部(制作協力:日本語検定委員会)

たびたび話題になる「若者言葉」。若者とは誰を指すのか、若者だけで使用されているものなのか、と気になる点はありつつも、新規性や意外性に富んだ言い回しは、なかなか興味深いものです。

学校の教室でも、そういった言葉が飛び交っているかもしれません。侮蔑的な表現や、相手や状況をわきまえない使用は慎むべきですが、子どもたちが使っている表現そのものを否定するのではなく、そこから言葉について考えるきっかけにつなげていきたいものです。以下、「こんな表現を目にしたり聞いたりしたら?」という例を考えてみました。


了・りょ・り(「了解した・分かった」という意味)

SNSやメッセージサービスなど、主に相手への返信に使われる表現として知られています。例えば家族間でも、「手紙をポストに入れておいてね」「り」などのやり取りがあるかもしれません。この表現は言うまでもなく「了解(した)」が極度に縮められたもの。つまり、「これだけ省略しても伝わる」という信頼関係を前提にした言葉だと考えられます。同時に、この言葉を使うということは、それだけ距離を近づけてしまうことになりますので、敬意を持つべき相手に対しては、失礼な表現になります。若者言葉のような表現を「なぜ使うのか/使ってはいけないのか」を、生徒自身が考える機会としてみてはいかがでしょう。


草・草生える(「笑える」「おもしろい」という意味)

インターネットスラングに由来する表現として知られていますが、生徒がこの言葉を使っているのに出会ったら、それが「どのような笑い」なのかを確認してみましょう。一口に「笑い」と言っても、爆笑・失笑・嘲笑・苦笑・冷笑と多くの語彙があるので、その中で状況や文脈に最も合うものを考えさせるとよいでしょう。ちなみに、東京書籍の教科書には、語彙学習に役立つ「言葉を広げよう」というページがあります。そういった教材も活用しながら、生徒の語彙を広げることにつなげていきましょう。


エグい(「驚いた・すごい」という意味)

もともとは「あくが強くて嫌な味がする」「冷酷な」という意味の言葉ですが、若者言葉では、対象を賞賛する文脈で用いられることがあります。程度を強調する表現や、ネガティブな意味をあえて反転させて使用する表現は若者言葉の特徴の一つですが、本来の意味や用法を知らない生徒も多いと思います。本来の意味を辞書で調べ、ほかにその気持ちを表現できる語彙がないかも考えさせるとよいでしょう。


ぴえん(「泣きそう・悲しい」という意味)

もう中学生は使っていない…かもしれませんが、涙が浮かぶ様子を表した言葉として、悲しいときだけでなく、うれしいときにも使われるようです。この言葉を見たり聞いたりしたら、「ぴえん」が「擬態語」と「擬音語」のどちらに当たるのかを考えさせてみてはどうでしょうか。擬態語は対象の様子について聴覚以外の感覚を音声に転換して言葉に置き換えたもので、擬音語は対象から聞こえる音声を言葉に置き換えたものです。「エーン」という泣き声は擬音語だと考えられますが、「ぴえん」という言葉は、対象となる心情の表出に焦点があることから、擬態語と考えるのがよさそうです。「ぴえん」を手がかりに、身の回りのオノマトペに目を向けさせるのもよいですね。


〇〇しか勝たん(「〇〇が一番だ・最高だ」という意味)

この言葉を聞いたら、文法学習の時間にしましょう。「しか勝たん」は、限定を表す副助詞「しか」+動詞「勝つ」の未然形+打消しの助動詞「ぬ(ん)」の連体形となります。ポイントは助詞の「しか」で、打ち消しの表現を伴い、言及されている対象以外を否定するものになります。つまり「〇〇だけが勝つ」という意味になり、そこから転じて「〇〇が一番だ」という意味で使われるようになりました。生徒とともに、教科書の文法を解説しているページを開いて、品詞分解をしながら確かめてみてはいかがでしょうか。


このように、生徒が仲間内で使っているような言葉にも、語彙を広げたり文法事項を確かめたりするヒントが詰まっています。そのヒントを見逃さずに、生徒といっしょに言葉の学習を広げていけるとよいですね。なお、東京書籍では日本語検定に協賛しています。ご興味のある先生は、一度ご自身の日本語力を測ってみてはいかがでしょうか? それでは、次回をどうぞお楽しみに!

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