
2024.3.13
ホンとの出会い
5回目となる「ホンとの出会い」は書店紹介! 大阪市にある「大吉堂」さんを取材しました。「コドモ心のヒミツキチ」を掲げるこのお店では、どんな本との出会いがあるのでしょうか?
Osaka Metro御堂筋線の昭和町駅から歩くこと10分。阿倍野の閑静な住宅街にたたずむ古本屋さん「大吉堂」。ライトノベルや、ヤングアダルト(YA)を中心に扱っています。お店を切り盛りするのは、店主の「おっちゃん」こと、戸井律郎(といりつろう)さんです。
店主の戸井さん
入口から入ってすぐ、棚一面にライトノベルやYA、児童書などが、所狭しと並んでいます。
壁一面に並ぶ本
「うちのコンセプトは、「10代の心(実年齢問わず)を刺激する古本屋」です。私は幼少期から本が好きでよく読んでいたのですが、中学生になったとき、何を読めばよいのか分からなくなり、本から離れてしまったんです。学校図書館に本がそろっていなかったり、地域図書館に若者向けコーナーがなかったりと、10代向けの本を見つけるのが難しい状況でした。ところが、高校生になり、学校の図書館に行ってみると、入口すぐの棚に、当時の若者向けエンタメ小説がたくさん並んでいました。「こんなにおもしろい本があるのか! なんで誰も教えてくれなかったんだ!」という思いがずっと残っていました」(戸井さん、以下同)
大吉堂の「YA図書箱」。読書録や読書案内本などが置かれる。
「YAは本の中でも中高生向けのジャンルですが、実は書店でも扱いが少ないんです。児童書コーナーの隅に少し並んでいるか、一般文芸や海外文芸などそれぞれのジャンルに点在していることが多いです。10代向けに本のコーナーが大きく組まれていることって、あまりないんです。そういった状況もあり、「若者向けの本がここにあるんだよ」ということを伝えたくて、YAをメインにした古本屋をしています」
お店の奥には机と椅子が置かれています。本を読むための場所かと思いきや、ここは「何もしなくていい場所」。それが、「10代のヒミツキチ」です。
10代のヒミツキチ〈何もしなくていい場所〉
「「何もしなくていい場所」が作れるのは、「古本屋の片隅」という場所の利点だと思っています。何も言わずに入って、何も言わずに出ていってもいいんです。申込み、予約、受付なしで使うことができます。こちらも基本ほったらかしなので、中学生や高校生らしき人が使っていることはありますが、私からは話しかけないようにしていて、どんな人が使っているかは把握していないんです」
自由に食べられる「今日のおやつ」も置かれている
「中高生のための居場所って、町の中になかなか無いですよね。大人はお金を出せば喫茶店などに行くことができる。でも、特に中学生にとって、何もなく座れる場所を探すって、難しいんじゃないかなと思います。
古本屋の前は児童館の職員として働いていて、対象は小学生・未就学児が中心になるのですが、そのときから中高生の存在は気にしていました。中高生のための居場所って必要だな、という思いがずっとあって、この「ヒミツキチ」をつくっています。
たくさん人を呼ぼうとか、そういうつもりではなく、ただ「ここにこういう場所があるよ」ということを街の人に知っていてもらえれば、それでいいかなと思っています」
懐かしい本や有名な本など、たくさんの背表紙が並んだカラフルな棚を見ていると、読みたい気持ちがふつふつと湧いてきます。棚の一つ一つから、「ここにおもしろい本があるよ!」という戸井さんのメッセージが聞こえてくるようです。
本棚の一角
最後に、戸井さんにYAの魅力をお伺いしました。
「YAはおもしろいですよ。思春期の頃の自分では分からない自分の気持ちを文章で表してくれてるんです。そこで、自分の気持ちに気づくきっかけになるかもしれない。「自分は今楽しいんや」「しんどかったんや」って気づく子もいるでしょう。小説を読んで、「自分はこんな風になりたい」と思う子もいるでしょう。自分のことを知るきっかけになるのがYAじゃないかなと思います。
本を読むことで、「自分の置かれている状況が実は当たり前じゃない」「自分とは違う人生もあるんだ」ということを知ることができる。大吉堂はそういう本を提供する場だと思っています」
店主の温かい想いの詰まった古本屋さん。懐かしい本や、自分のお守りになる大切な本に出会えるかもしれません。ぜひ一度、ふらっと訪れてみてはいかがでしょうか。
(取材:2024年1月)
大吉堂
〒545-0021 大阪府大阪市阿倍野区阪南町3丁目12−23
(Osaka Metro昭和町駅4番出口より徒歩10分)
営業時間 ▶ 11:00〜19:00
定休日 ▶ 不定休
HP https://daikichidou.web.fc2.com/
※店舗情報は、取材日の情報に基づいています。