国語教師のための日本語講座 正しい日本語使っていますか?

2023.12.27

国語教師のための日本語講座

正しい日本語使っていますか?

こくごスタジオ編集部(制作協力:日本語検定委員会)

国語の先生である以上、自身の使う日本語は、生徒のお手本にならなければいけませんよね! そこで本シリーズでは「国語教師のための日本語講座」と題し、国語教師として知っておきたい日本語の使い方について解説していきたいと思います。

それでは突然ですが、先生方にクイズです!
「姑息」の意味は次のどちらでしょうか?
ひきょうな
一時しのぎ

先生の学校で同じクイズを出題したら、どちらの回答が多いと思いますか? おそらく、多くの中学生は ①ひきょうなと答えるのではないでしょうか。学校生活の中でも「後出しじゃんけんなんて、姑息なことを」とか、「姑息な性格だから、平気で噓をつく」など、① のような否定的な意味で使う場面を目にしたことがあるのではないでしょうか。

そこで思わず「正しいのは②です」と答えてしまいそうになります。でもちょっと待ってください! 本当に「正しい」のでしょうか?

文化庁が令和3年度に実施した「国語に関する世論調査」を見てみましょう。この調査は、16歳以上の全国約3500人を対象にしたものですが「姑息」の意味を一時しのぎと回答した人は17.4%で、ひきょうなと回答した人は73.9%という結果でした。この結果に関して、文化庁は「辞書等で本来の意味とされてきたものとは異なる方が多く選択された」と解説しています。ここがポイントです。文化庁は、言葉の意味に対して「正しい」ではなく、「辞書等で本来の意味とされてきた」と表現しているのです。

ここで「姑息」の語源を確認してみましょう。手元にある『暮らしのことば 新語源辞典』(講談社/2008年)によると、「姑息」は、孔子の門人である曽子の言葉「君子 くんしひとあいするやとくもってす。細人さいじんひとあいするやそくもってす。(『礼記』)」が語源とされています。「姑」にはしばらく、「息」には休むという意味があり、転じて「根本的に解決するのではなく、その場しのぎ・一時的に間に合わせること」という意味となったと言われています。

確かに語源からも、本来の意味は②一時しのぎというわけです。では、先ほどの調査で7割以上の人が① ひきょうなと回答している事実をどう考えればよいでしょうか。文化庁は、①ひきょうなの意味として用いられるようになった理由として、「重要なことを一時の間に合わせで済ませることに終始すれば、ひきょうと見られるのが当然であり、意味的につながりやすいので」と推測しています。

言葉は時代とともに変化していきます。すでにいくつかの国語辞典では、②一時しのぎの意味に加え、(俗に)という断りを入れた上で、① ひきょうなという意味を併記しています。このことからも、すでに誤用と断ずることはできなくなっているのではないでしょうか。

話を最初のクイズに戻します。国語教師であれば、もし生徒が姑息をひきょうなという意味で使用しているときは「正しい意味は②です」ではなく、「本来の意味は②だが、最近では①の意味で使用することも多い」と指導したいところです。

今回から始まった新シリーズ「国語教師のための日本語講座」は、いかがでしたか? 今後も参考になる情報をどんどんお届けいたします。なお、東京書籍では日本語検定に協賛しています。ご興味のある先生は、一度ご自身の日本語力を測ってみてはいかかでしょうか? それでは次回をどうぞお楽しみに!

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