
2023.10.25
本の世界を楽しむヒント
「こくごスタジオ」がお送りしてきた「本の世界を楽しむヒント」もいよいよ最終回。第3回(最終回)は、東京学芸大学附属大泉小学校の富澤佳恵子(とみざわかえこ)さんによる「ブックトーク」の紹介です。
「ブックトーク」は、「通常あるひとつのテーマにそって、数冊の本を、順序よく、じょうずに紹介すること」(※1)を指します。聞き手の、本への興味関心を引き出すことが、いちばんの目的です。
本校の「図書の時間」では、授業時間の半分にあたる20分を目安に、クラス全体で、読み聞かせ等の耳から聞く読書の時間をとっています。その際、「ブックトーク」は特に高学年に対してよく行っています。
先日、5年生の先生から「読書の秋ということもあり、今日の午後、図書の時間をとりたい。」との依頼がありました。そのときに作成した(※2)ブックトークのシナリオを紹介します。
最近涼しくなって、ようやく読書の秋が来た気配がしますね。
今日は「本が読みたい!」というテーマでブックトークをします。
まず、「本が読みたい!」と思ったとして、そもそも本がなければ、読むことはできません。みなさんは、本がどうやって作られるか、知っていますか?
この『本は こうして つくられる』は、作家の中にアイディアが生まれて、それが実際に1冊の本になるまでを、とても丁寧に教えてくれます。本を作るには、多くの工程があり、多くの人の関わりが必要なことが分かります。
では、私たちがよく知っている形の本が、いつ頃成立したのか知っていますか? それを教えてくれるのが、この『本のれきし5000年(たくさんのふしぎ傑作集)』です。
話は、古代エジプトから始まります。古代エジプトでは、紙ではなく、パピルスというナイル川のほとりに茂る植物が使われていたそうです。パピルスは、折り曲げに弱く、片面にしか書けないので、この時代の本は、今のように綴じたものではなく、巻物でした。どこに何が書いてあるか、探すのには不便です。
一方、粘土板を使っていたところもありました。重そうだし、扱いもたいへんそうですが、粘土板をたくさん収めた図書館もあったそうです。
やがて、ヨーロッパで、動物の皮を使った羊皮紙というものが使われるようになりました。パピルスとは違って、両面に書けますし、折り曲げたり、綴じたりもできる素材なので、ここでようやく、今日のような形の「本」ができあがったということです。
でも、羊皮紙は作るのが大変で、とても高価です。15世紀頃、ヨーロッパでは中国から伝わった紙が広く使われるようになるのですが、こうして見てみると、紙は、パピルスの欠点も、粘土板の欠点も、羊皮紙の欠点も克服した、たいへん便利なものだと実感できますね。
ヨーロッパでは、紙が広く使われるようになったのとほぼ同じ時期に、同じ内容のものをたくさん、しかも早く作ることができる、金属で作った「活字」による印刷技術も開発されました。技術革新があったおかげで、本は何冊も作られるようになり、一部の人しか読めない、とても貴重で高価なものから、もっと身近なものになります。本を収めた図書館も増えて、自分の家に本がなくても、図書館に行けば、本が読めるようになったのですね。
そんな図書館に行って、本を借りるために、とても頑張った男の子がいます。『すえっ子のルーファス(岩波少年文庫 117)』に登場するルーファスです。四人兄弟の末っ子で、まだ学校に行っていないので、4歳か5歳くらいでしょうか。
ある日、お兄ちゃん、お姉ちゃんがみんな、図書館で借りてきた本を夢中で読んでいるのを見て、ルーファスは羨ましくてしかたなくなりました。「自分も図書館で本を借りる」と、初めて一人で図書館に出かけて行くのですが、本を借りるのがどんなにたいへんだったか!
まず、「図書館のおばさん」に「手をきれいにしてきなさい」と言われて、手を洗いに家に帰ることに。図書館に戻ると、今度は、「利用者カードを持っていないと借りられない」と言われてしまいます。
まだ、今のようにバーコードでは管理されていない時代の図書館です。字が書けないと登録ができないのですが、ルーファスはそんなこと知りません。それで、まだ字が書けないのに、登録用紙に名前を書こうと四苦八苦することになります。
「おばさん」が見本を書いてくれて、何度も練習して、やっと書けたと思ったら、今度は、その紙にお母さんのサインが必要、ということで、またまた家に帰ります。
次に図書館に戻ってくると、なんと、もう閉まっているではありませんか。それでも「今日は絶対に本を借りて帰る」と心に決めているルーファスは、諦めません。空いている窓から忍び込みます。でもそれは、石炭が積んである部屋の窓でした!…と、ここまで頑張れば、予想もつくと思いますが、ルーファスの冒険の結末、ぜひ読んでみてください。
ようやく、最後の本にたどりつきました。スペインの昔話「明かりをくれ!」(『おはなしのろうそく30』)で、とても「本が読みたい!」と思っていたのは誰でしょう。全部読みますので、聞いてください。
(本の内容を紹介する)
今日のブックトークで「本が読みたい!」と思ってくれたでしょうか。ぜひ読みたい本を見つけて借りて帰ってくださいね。
おもしろいのは、ブックトークの中でも、いちばん気持ちが乗って紹介した本に、借り手がつくという現象です。このブックトークの後、これまであまり動きのなかったモファット兄弟のシリーズが、4冊とも全て貸出しになり、驚きつつ、とても嬉しく思いました。
ほかの学年に向けたブックトークの事例やシナリオ等にご興味がありましたら、冒頭に挙げた資料や、『先生のための授業に役立つ学校図書館活用データベース』(東京学芸大学学校図書館運営専門委員会)もぜひご参照ください。
ブックトークの中で紹介した本のリスト
1.『本は こうして つくられる』 アリキ/作・絵 松岡享子/訳 日本エディタースクール出版部 1991)
2.『本のれきし5000年(たくさんのふしぎ傑作集)』(辻村益朗/作 福音館書店 1992)
3.『すえっ子のルーファス(岩波少年文庫 117)』(エレナー・エスティス/作 渡辺茂男/訳 岩波書店 2004) シリーズとして、ほかに『げんきなモファットきょうだい』『ジェーンはまんなかさん』『モファット博物館』の3冊があります。
4.『おはなしのろうそく30』より「明かりをくれ!」(東京子ども図書館/編 2014)