
2023.11.8
ICT実践
「一人一台端末」時代となった今、改めてICTの活用について考えてみませんか? 当コーナーでは各地のICT実践を中心に、デジタルを活用した授業づくりについて考えてみたいと思います。今回は、香川県多度津町立豊原小学校の西吉亮二(にしよしりょうじ)先生による実践を取り上げます。
国語科の授業における効果的なICTの活用を考える前に、ICTの活用というのはあくまで、方法についての視点であることに留意しておきましょう。ICTの活用自体が授業の目的になることは、まず考えられません。一人一台のタブレット端末がない中で授業を展開していた際に感じていた困り感やつまずきを、解消する一助として、ICTの効果的な活用を考える必要や価値があるということです。
これまでの自身の授業を振り返ると、授業のさまざまな場面において、積極的に発言する子どもが活動の中心になりがちで、その周りで見ているだけになってしまう子どもも少なからずいました。もちろん机間指導や発問の工夫等によって、一人でも多くの子どもが活動に主体的に取り組めるようにと考えてきました。一人一台のタブレット端末とネットワークを効果的に使うことで、このような課題を軽減・解消することができ、「主体的・対話的で深い学び」の実現に向かうことができるのはないかと考えます。タブレット端末を活用することで、飛躍的に行いやすくなるのが「情報の収集」「記録」「集約」「共有」ではないでしょうか。もちろん、ICTの強みを挙げればほかにもあると思いますが、今回は上記の4点を意識した実践を紹介したいと思います。
第6学年 24名
「話し合って考えを深めよう」(令和2年度版『新しい国語 6』東京書籍)
互いの意見を分類したり整理したりして、計画的に話し合い、考えを広げたりまとめたりすることができる。
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次 |
時 |
学習活動 |
|---|---|---|
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Ⅰ |
1 |
○言語活動を設定し、学習を進める計画を立てる。 |
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Ⅱ |
2 |
○目指す話し合いについてイメージを持つ。 ○話し合いたい話題と、自分の立場を決める。 |
34 |
○話し合いに向けて準備をする。 (情報の収集、整理、役割分担等) |
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5 |
○話題について話し合う。 |
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Ⅲ |
6 |
○単元について振り返る。 |
※本実践では学習支援アプリ「ロイロノート」を使用して行っています。(以下「ロイロノート」)
子どもが考えた話題を取り上げることで、話し合いへの意欲を高めることにつながります。話題を考える際には、学級内で話し合う適切な話題になるよう、以下の視点を提示しました。
○立場が明確になる話題
○みんなが分かる(共感できる)話題
ロイロノートを用いて、考えを集約し、一覧にして提示して、学級で取り上げる話題を決めていきました。
























話し合いたい話題を集約してモニターに示す
話題を考える際の2つの視点は、話題を決めるための視点にもなります。また、立場を決めて分かれる際にあまりに人数が偏ると話し合いが難しくなる場合が考えられること、理由が多様にあること等も意識して話題を決めていきました。子どもたちと話し合い、今回は「遊びにいくなら山がいいか、海がいいか」という話題で、学級の話し合いを行うことに決まりました。話題が決まったら、最初に自分がどちらの立場なのかを学級全体に共有しました。
























話題について自分の立場を明確に
自分の立場について、ただ思ったことだけを伝えるのでは、相手に納得してもらえないことがあります。そこで、自分の考えの説得力を高めるために自分の経験に基づいて説明したり、考えの理由に関する情報が正確なものか確かめたりすることも大切です。
今回、山(海)で遊ぶことについてインターネットを用いて情報収集する際には、「何のために情報を集めるのか(目的)」「検索キーワード(方法)」等を共有しました。
検索キーワード
「山(海)で遊ぶ よさ」、「山(海)で遊ぶ 楽しさ」「山(海)で遊ぶ 危険」「山派 海派 どっち」、等
インターネット環境の充実によって情報の検索が簡単になる一方、検索ワードを何にすればよいかやタイピングスキル等で困り感を抱えている子どもがいます。検索キーワードを提示したり、フリック入力等の柔軟な方法を考えたりすることは、全ての子どもが授業に向かうために大切な視点だと思います。ICTの活用が新たな困り感を生まないように、多様で柔軟なサポートの方法を大切にしたいと思います。
話し合いを始める前に、下記の点について司会役の子どもと簡単な打ち合わせをしました。
①どのような流れで話し合いを進めるか
②司会の言葉
③「こんなとき、どうする?」
打ち合わせ(言葉)で確認しただけでは、不安な子どもがいるでしょう。そこで、打ち合わせの内容をテキストカードにメモしておき、司会役の子どものタブレットに送っておくと、話し合いの最中でも確認することができます。話し合いが停滞すると、ついつい教師が手助けしたくなりますが、話し合いの最中には、司会役の子どもに任せ、教師は見守る役に専念できるといいですね。
司会の手順等をカードに記録・共有
話し合いでは、それぞれの立場からいくつもの考えが発表されます。本実践の話し合いでは、山で遊ぶよさ、海で遊ぶよさ、質問、質問に対する答え等、たくさんの情報が表出しました。分かりやすい考えや理由の説明ができたとしても、たくさんの情報が行き交う中では、ついつい忘れてしまうことがあります。そこで、司会がメモを取ったり、教師が書記役となったりして発表を記録し共有していくと、情報の整理が行いやすくなります。
発表したことを即時に記録・共有
話し合いが終わった後に重要な学習活動は振り返りです。子どもが自身の話し合いへの取り組み方を見つめられるように、振り返る観点「最終(話し合いを経て)の自分の考え」、「話し合いの参加度(◎・〇・△)とその理由」を明示しました。ロイロノートのテキストカードを用いて、観点ごとに記述させることで集約と振り返りの把握が行いやすくなりました。子どもにとっても、カード別に記述することで「何」について振り返るのかが分かりやすくなります。
これからの時代を生き抜いていく子どもたちにとっては、ICT機器を効果的に使うスキルは必要不可欠となっていくはずです。それは、同時に、子どもたちの学びをデザインする教師にとっても同様だと思います。本実践を行う中で、タブレット端末の操作でうまくいかなかったことが何度もあります。その都度、解決に数分かかったり、子どもたちに「ごめん、ちょって待ってもらってもいいかな。」と伝えたりしました。言うなれば、授業の中での私の失敗です。ICT機器の使用では、このちょっとしたトラブルがつきものです。この、ちょっとしたトラブルこそ、ICT機器の使用を億劫にする要因の一つだと思います。「失敗こそ大切な経験。」「うまくいかなくてもいいよ。」…よく子どもに伝える言葉ではないでしょうか。しかし、大人になる程、ついつい、失敗やうまくいかないことを避けたくなります。子どもにいちばん近い大人のモデルは教師です。だからこそ、初めてのことに前向きにチャレンジする姿勢を持ちたいですね。