
2023.9.27
ICT実践
「1人1台端末」時代となった今、改めてICTの活用について考えてみませんか? 当コーナーでは各地のICT実践を中心に、デジタルを活用した授業づくりについて考えてみたいと思います。今回は、大阪市立高松小学校の籔下泰弘(やぶしたやすひろ)先生による実践を取り上げます。
※当記事は「ひろがれ国語第7号」(2023年9月発行)の記事を改題・再構成したものです。
Society5.0時代の到来により一層、ICTの活用がどの教科でも求められており、「国語科だから、本を読み、考えを書いて、交流さえしていればよい」と、悠長なことは言えない局面です。では、どのように国語科でICTを活用していけばよいのでしょうか。
(1)思考の見える化
(2)瞬時の考えの共有
(3)思考の繰り返し(試行の繰り返し)
何といっても、ICTの強みは学習情報や児童の考えを可視化することによって、瞬時に共有できることです。
児童の初発の感想をもとに「考えのモデル」を作り、選択肢にしてICTで「見える化」しておくことで、対話の起点作りが瞬時にできるようになります。学習活動で、瞬時の考えの共有ができると、自分と友達の考えを比べる機会が増えます。比べる機会が増えると、自分の考えを繰り返し問い直すことにつながるので、考えの再構成が行いやすくなります。再構成が行われるようになると、これまで気にも留めなかった新たな価値に気づくことができるわけです。
第5学年 21名
物語の山場をとらえよう 「世界でいちばんやかましい音」(令和2年度版『新しい国語 五』東京書籍)
物語の山場がどこになるのかを捉えるために、変化の原因と結果の関係を考えながら読むことができる。
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次 |
時 |
学習活動 |
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Ⅰ |
12 |
○言語活動を知り学習全体の見通しを持つ。 ○全文の読み聞かせを聞く。 ○初発の感想を書く。 |
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3 |
○初発の感想を交流し、学習課題を作る |
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Ⅱ |
4 |
○物語を分かりやすくまとめる |
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5 |
○王子様、王様、だんなさん、おくさんの性格について考える。 |
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6本時 |
○山場がどこかについて考える。 |
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Ⅲ |
789 |
○並行読書の本から自分が紹介したい『オセロボード』を作成する。 |
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10 |
○グループで交流後、その中の代表が全体に紹介する。 |
Ⅱ次第6時では、タブレット端末にあるSky株式会社のアプリ「SKYMENU」の「発表ノート」機能を活用し、「山場がどこか」について考えました。児童の初発の感想をもとに指導者が考えの選択肢を作成します。
児童は(図1)の四つの考えの選択肢の中から選んで、全員が考えを持ち、瞬時に参加することができました。




図1(実際の画面をもとに再現したもの。以下同)
瞬時の考えの共有は「今、何について話しているのか」につながり、一人一人の児童が自分のペースで交流に参加することができました。
授業序盤は(図2)のように考えが分かれました。





















図2
①世界中の人が黙り、町が静まりかえる。…13名
②町の人がこそこそと家に帰る。…0名
③王子が自然の音を聞き、うれしそうにはしゃいでいる。…6名
④町がやかましくなくなる。…2名
授業中盤では、ペア交流をしても、学習場面を読んでも、児童の思考は停滞して、困ってしまいました。
授業終盤では、指導者から教科書のてびきにある「言葉の力:物語の構成をとらえる」を全体で確認後、次の【仮定の発問】を行いました。
もし、王子が自然の音を気に入らないで怒っていたら、その後、町はどうなっていたのでしょうか。
その結果、児童が自分の考えを主体的に問い直し、伝え合う様子が見られました。
T:ペアで交流してみましょう。〈どの児童も夢中になって対話を行う。〉
T:ペアで交流したことを全体で紹介してくれませんか。
C1:次の日もきっと、がやがやうるさいと思うわ。
T:なんで、ですか。
C1:だって、王子様が鳥の声などに気づかずに怒っていたら、自然の音が分からずに、明日もやかましい町のままだったと思うからです。
C2:付け足して、誕生日のプレゼントで、やかましい音で、王子の気持ちがいいようになるはずなのに…だけど、ほしい音ではないので、王子は、もっと怒って、もっと、自然の音が嫌いになっているから町はうるさいままだったと思います。
「もし」という仮定を表すつなぎ言葉を活用し、「王子の反応・行動が本文とは真逆なら、どうなるのか」を推理できるようにしました。その結果、児童は本文にある実際の結末と、自分の頭の中で想像したもう一つの結末を比較することができたようです。
指導者の発問を受け、児童は「見える化」された自分の考えを、主体的に協働的に問い直しました。それによって、登場人物の行動や気持ちの意味について想像を広げ、自分の考えを深め、変容させることに至りました。(図3)





















図3
①世界中の人が黙り、町が静まりかえる。…0名
②町の人がこそこそと家に帰る。…0名
③王子が自然の音を聞き、うれしそうにはしゃいでいる。…21名
④町がやかましくなくなる。…0名
このように、ICTによる「思考の見える化」は、瞬時に考えを共有し、繰り返し、協働して考えを問い直そうとするきっかけをつくれると、分かりました。すなわちICTの活用は、一人一人の児童が具体的に考えを持ち、想像を広げるのに最適な個別の学びの実現につながるともいえるのではないでしょうか。
みなさんも「思考の見える化」を使って、児童が参加したくなる国語の授業づくりに挑戦してみませんか。