
2023.8.30
学力調査から見る課題②
このコーナーでは小学校国語に関わる学力調査の結果を分析し、そこから見られる課題をもとに、先生方の指導改善のヒントになる情報をピックアップしていきます。
東京書籍が発行している「標準学力調査」の結果を通して発見された課題に迫る、当シリーズ。 今年の4月に公開した記事では「修飾語」を取り上げましたが、今回は「辞書の使い方」に注目したいと思います。
「辞書の使い方」については、ここ十数年にわたり課題がある問題ではありましたが、特に最近は、電子辞書やパソコンやタブレットの普及により、いわゆる紙の国語辞典・漢字辞典が子どもたちにとっては身近な存在ではなくなってきているのかもしれません。
一方で、学習指導要領には、「辞書や事典の使い方を理解し使うことは、情報化社会において必要な情報を収集したり、語彙を豊かにしたりするために必要な『知識及び技能』である。(中略)辞書や事典については、調べる学習などにおいて活用できるようにすることが求められ、国語科に限らず、他の教科等の調べる学習や日常生活の中でも積極的に利用できるようにすることが大切である。」(『小学校学習指導要領(平成29年告示)解説 国語編』より。強調部は編集部による)とあるように、情報化社会の現在においても、子どもたちには必ず身につけてもらいたい力です。
以下、実際にどのような傾向が見られるのか、どのような指導改善が考えられるのか、見ていきたいと思います。
過去数年間での「辞書の使い方」の結果正答率は、以下の通りです。(ここでは、実際に出題された問題ではなく、類題を掲載しています)
(類題)
●国語辞典で「しょうたい」より前にのっている言葉を、次から一つえらんで、その番号を書きましょう。
1:しろ
2:しゅみ
3:しょくにん
4:しょうどく
正答:2
(過去数年間の平均正答率は61.5%)
1…15.8%
2…61.5%
3…8.0%
4…11.9%
「パターン1」は、国語辞典に載っている言葉の順序を問うもので、五十音表を基に正しく判断できるかどうかを見る内容です。基礎的な内容ではあるものの、約4割の児童が他の選択肢を選んでいます。
(類題)
●次の会話文を読んで、 にあてはまる言葉を、あとから一つえらんで、その番号を書きましょう。
1:ひえる
2:ひえた
3:ひやす
4:ひやして
正答:3
(過去数年間の平均正答率は64.4%)
1…15.9%
2…10.7%
3…64.4%
4…6.3%
「パターン2」は、言葉の「言い切りの形」を問うものです。中学校で動詞の活用や自動詞・他動詞を学習する前の段階ですが、「語彙」の範疇として身につけておきたい内容として出題しています。しかし、「ひえる」「ひやす」の区別が付いていない児童も多く、約4割の児童が誤答を選択しているという結果となっています。
(類題)
●西野さんは、次の文の「とる」の意味を調べるため、国語辞典を開きました。すると、あとの〔国語辞典の一部〕のように、1から4の意味がのっていました。「とる」の意味は、1から4のどれですか。一つえらんで、その番号を書きましょう。
父は、新しく買ったソファが、大きすぎて場所をとるので、こまっている。
〔国語辞典の一部〕
とる【取る】
正答:2
(過去数年間の平均正答率は57.8%)
1…24.2%
2…57.8%
3…9.5%
4…4.1%
「パターン3」は、文脈に沿った言葉の意味を、国語辞典の内容を確認しながら正しいものを選ぶというものです。ここでも、誤答の選択肢を選んでいる児童が4割近くいるという結果になっています。
では、「辞書の使い方」を定着させるには、どのようにしたらよいでしょうか?
まず、国語辞典の仕組みとして、「言葉は五十音順に並んでいる」ことを改めて理解させることが必要です。
1文字目の「あ」の方が「ま」より前にあるから、国語辞典でも「あめ」の方が「まめ」よりも前に載っている。
1文字目は同じ「く」だが、2文字目の「し」の方が「り」より前にあるから、国語辞典でも「くし」の方が「くり」よりも前に載っている。
上記のように、子どもたちと一緒に五十音表を見ながら、ゲーム感覚で辞書を引いてみるという活動も面白いのではないでしょうか。長音・拗音・促音のある言葉を入れてみると、もっと楽しくなるかもしれません。
「辞書を引く」ということは、「世の中にはいろいろな言葉がある」ということを改めて実感し、語彙力を高めることにつながります。分厚い紙の辞書をぱらぱらとめくり、さまざまな言葉の中から目的の言葉を見つけるという作業は、今の時代「非効率」と捉えられるかもしれません。
しかし、調べた言葉に線やマーカーを引いたり、付箋を貼ったりする作業を行うことで、記憶に残りやすくなります。また、目的の言葉を調べていると、近くにある言葉について「こんな言葉もあるんだな」「この言葉にはこういう意味もあるのか」「この言葉とこの言葉は五十音的には近いんだな」という、新たな発見につながる場合もあります。これは、「検索すると目的の言葉がすぐに出てくる」電子辞書やコンピューターにはない魅力で、より言葉が定着しやすいと考えられています。
今後、ますます紙の辞書の出番は少なくなっていくのかもしれません。しかし、子どもたちにとっては、小学生・中学生の今が、辞書に親しみながら言葉を覚えていく千載一遇のチャンスとも言えます。
ぜひ、国語辞典・漢字辞典の良さを、子どもたちにも実感してもらいましょう!