
2023.8.9
ホンとの出会い
第3回の「ホンとの出会い」は、しばらくぶりの書店紹介! 香川県高松市にある「本屋ルヌガンガ」さんを取材しました。思わず立ち寄りたくなる素敵なお店には、どんな本との出会いがあるのでしょうか?
総延長では日本一の長さを誇る高松中央商店街。そのアーケードを通り、路地裏に入ると見つかるのが「本屋ルヌガンガ」(以下、ルヌガンガ)。中村勇亮(なかむらゆうすけ)さん、涼子(りょうこ)さん夫婦が営む、おしゃれな本屋さんです。
店主の中村勇亮さん
「ルヌガンガ」という店名は、スリランカの建築家ジェフリー・バワが50年かけて作りあげた庭園邸宅の名前から。新婚旅行で実際にルヌガンガに行き、その素敵な庭に惚れ込んだんだとか。
書店員の経験のあるお二人が、ぶらりと立ち寄ることができる街の本屋さんをつくりたいと、2017年にオープンしました。
「店を開く前、ここはレコードショップだったんです。昔は小さな本屋さんやレコードショップがたくさんあって、街に出ていく機会がありました。最近はネットもあり、好きな人しか本屋さんに行かないようになったかもしれません。おしゃれな店だと思ったら間違って本屋さんに入ってしまった。そんなことが起こるような、街の入り口になりたいと思っています」(勇亮さん)
東京から来たあるお客さまは、ルヌガンガで出会った歌集に感動し、同じ著者の新刊が出たときに、わざわざもう一度この店まで来て本を買われたそうです。
書棚には新刊書籍を中心に、勇亮さんが選書された本がならびます。文化人類学や福祉・ケアの本をはじめとした本好きにはたまらないラインナップをそろえつつ、初めて知るジャンルもあって、つい長居してしまいそうです。
「あるジャンルが流行したときは、一方向に引っ張られることがないよう少し疑問をもつようにしています。流行りのジャンルでなくても、今まで知らなかった世界に興味が広がるような取っかかりをつくりたいんです」(勇亮さん)
取材をしていると、ちょうど試験終わりの高校生が、お母さんとの待ち合わせで店に入ってきました。ルヌガンガには中学生のときから通っているそうで、真剣なまなざしで本を手に取っています。
地域の人たちがゆったりとすごす店内
奥には特徴的な階段書棚とカフェスペースがあり、涼子さんが淹れてくれるコーヒーでほっと一息。コーヒーを飲みながら日々の疲れを癒やしていると、つい手に取りたくなる絵本がずらり。涼子さんが選んでいるというこだわりの絵本で、絵本好きの人が集まるイベントも開かれているのだとか。
「コロナ禍のとき、それまで行ってきた絵本の読み聞かせができなくなってしまったと、あるお客様がおっしゃいました。絵本を読める場所がほしい、オススメの情報がほしいといった声に応える形で、絵本の持ち寄り会という読み聞かせ会を始め、今もそれが続いています。つい先日は、その勉強会のテーマをグリーフケアで行ったのですが、涙を流される参加者の方もいました。自分が自分のために選んだ特別な一冊には、人の感情を動かすパワーがあることを感じましたね」(涼子さん)
涼子さんがコーヒーを淹れてくれるカフェスペース
夕方になるとお客さんも多くなってきました。そこに「ただいま」という元気な声が。子ども店長の麻子(あさこ)さんです。近くの小学校に通う四年生。慣れた様子で、カフェスペースの机の上に宿題を広げます。宿題をしながら「ここわからん〜」とお父さんを呼ぶときも。
麻子さんといっしょに宿題を考える勇亮さん
休日はお店の手伝いをすることもあるそうです。本に囲まれながら育ってきたので、さぞ国語が好きなのだろうと思ったら、意外にも今好きな教科は音楽だとのこと。ピアノを弾くのが楽しいのだそうです。
「国語だとやっぱり物語が好き。『ニャーゴ』が一番心に残ってる」(麻子さん)
本を読むのが日常になっているという麻子さんに好きな本を聞くと、この店にあるものならと、角野栄子さんの『魔女の宅急便』を探してくれました。角野さんの影響からか、最近は魔法が使える主人公の小説を書きはじめたそうです。思いついたものをほぼ毎日自由帳に書いているようで、どんな物語ができるのか楽しみですね。
「朝はドラえもんのマンガを読んでるけど、夜は文字だけの本か、絵本を読むことが多いかな」(麻子さん)
涼子さんは、今でも麻子さんが寝る前に絵本を読み聞かせているそうですが、お母さんが疲れているときは麻子さんが代わりに読み聞かせをすることも。
魔法の世界と現実の世界がいっしょくたになっている、ぼんやりとしたグレーゾーンを大事にしてほしいと、涼子さんは言います。本を通して想像する力、自分で考える力をつけてほしいとのこと。
「地元の方をはじめ、徳島や岡山など遠方からのお客様も多いです。旅行で香川に来られたときは、その土地の本屋さんを見てみるという感覚で、ぜひお越しいただければうれしいです」(勇亮さん)
本とともにゆったりとした時間を過ごせる、ルヌガンガ。タイミングが合えば、子ども店長の麻子さんがお店を案内してくれるかもしれません。ぜひ一度、足を運ばれてみてはいかがでしょうか。
(取材:2023年7月)
本屋ルヌガンガ
〒760-0050 香川県高松市亀井町11番地の13 中村第二ビル1F
(ことでん瓦町駅より徒歩10分)
営業時間 ▶ 10:00~19:00
定休日 ▶ 毎週火曜
電話 087-837-4646
https://www.lunuganga-books.com/
※店舗情報は、取材日の情報に基づいています。