
2023.1.18
ホンとの出会い
本を手に取る瞬間は、いつだって素敵なもの。「ホンとの出会い」では、そんな「本」をめぐる場所や人に関わる記事をお届けします。第1回は、大阪にある小さな書店「本のお店スタントン」さんを取材しました。
大阪市の東住吉区にある、駒川商店街。南北と東西に延びる商店街には多くの店舗が並び、地域の人々でにぎわいを見せています。そんな商店街から一つ路地を入った所にあるのが「本のお店スタントン」。店主の田中利裕さんがお一人で切り盛りする、素敵な本屋さんです。
店主の田中利裕さん
お店に入ってすぐ広がるのが、児童書のコーナー。温かい光の差し込むスペースには、子どもが座って読むことができるテーブルと椅子も設置されています。新刊書籍だけでなく古書も扱っているスタントンですが、お店の特徴の一つがこの児童書。入り口から店内半ばまで、絵本をはじめとする児童書が目を引きます。
明るくてゆったりとした雰囲気の児童書コーナー
スタントンを開く前は、同じ商店街にあった「アセンス針中野店」という書店で勤めていた田中さん。残念ながらそのアセンスが閉店することとなり、2018年に田中さん自身でこのお店を開くことになりました。
「この商店街にあった本屋がなくなってしまうということで、さみしがるお客さんが多かったんです。本を求めている人に来てもらえる場所が必要だということと、自分自身の仕事場所を作る必要もあり、このお店を開くことにしました」
アセンス時代から、子どもたちに本の読み聞かせを行っていたこともあり、そんな場所を引き継いでいけないかと考えたそうです。
「前の書店でも、月に1回ほどは読み聞かせの会を開いていました。また、児童書はけっこうコンスタントに売り上げがあったんです。今の店の規模だと、大きな書店のような品揃えにするのは難しい。扱える本が限られるということもあり、児童書を一つの中心に据えることにしました」
児童書は、子どもだけでなく大人にとっても貴重な出会いの場になると、田中さんは言います。
「児童書は、古びないところがあると思います。新しいものだけが目を引くわけではなく、昔からの定番の絵本なども織り交ぜて展開できます。そうすると、買いに来た大人の方も、自分が子どもの頃に読んだ絵本に出会うことができるんです。そういう児童書を経由して、大人もまた新しい本に巡り合えるわけですね」
児童書の棚の上には、一般向けの書籍も置かれています。それぞれが別のジャンルとして切り分けられるのではなく、大人も子どもも、自然といろいろな本を目にする機会が生まれそうです。
「子どもにとっても、児童書や絵本から、一般向けの書籍まで目にすることができます。初めは絵本が中心でも、年齢が上がるにつれ「これは何だろう?」「こういう世界もあるんだ」ということを知ってもらえれば、それがまた本との出会いを広げることになるんじゃないかと思いますね」
子ども向けの本と一般向けの本が、心地よく同居する空間
お店の一角にはギャラリースペースも用意されており、定期的に展示を行っているそうです。このほか、店内にはちょっとした雑貨やフライヤーなども置かれており、眺めているだけでも楽しい時間を過ごせます。ふらっと立ち寄った先から、本だけでなくさまざまな文化に出会うことができる場所。必ずしも本を買うという目的がなくても、気軽に入れるのが本屋さんの魅力だとか。
「本屋は、必ずしも本を買うという目的がなくても行ける所だと思います。「なんかあるんちゃうかな?」とふらっと入って、「なかったわあ」で出て行ける場所。本を買わなかったとしても、「こんなんあんねんや」という気づきを持って帰ってもらえればいいですね」
デジタル化の進む現代においては、インターネット上の書店にサインインすると次々に自分に向けた本が薦められてきます。しかし一方で、たまたま目にした本との出会いも大切にしたいもの。偶然を演出してくれる書棚が並ぶ本屋さんは、そんな出会いの宝庫なのかもしれません。
お店の前にも古書が並ぶ。取材日は、大阪出身のイラストレーター
である益田ミリさんの展示が行われていた(展示は1/18まで)
取材中も、地域の方が訪れては田中さんとお話を交わしたり、本を眺めたりしていたのが印象的でした。お近くを訪れる機会があれば、本との出会いを求めて「本のお店スタントン」に足を運んでみてはいかがでしょうか。
(取材:2022年12月)
「本」のお店スタントン
〒546-0043 大阪市東住吉区駒川5丁目14-13
(近鉄針中野駅すぐ)
営業時間 ▶11:00~19:00
定休日 ▶ 毎週火曜、第1・3月曜
電話 06-6694-5268
※店舗情報は、取材日の情報に基づいています。