
2023.1.11
授業作りQ&A ②
国語の授業作りでの、悩みごとや疑問はないでしょうか? 本記事ではテーマごとに、解決のためのアイディアやヒントを紹介していきます。第2回のテーマは「語彙力」。川崎市立はるひ野小学校の土居正博(どいまさひろ)先生に、そのポイントを紹介していただきました。
めざせ、授業の「アップデート」!
※当記事は、「教育シリーズ:国語の授業作りQ&A」(2022年10月発行)の記事を再構成したものです。




子どもたちの語彙力をつけるには、語彙の量を増やすことと語彙の質を高めることを意識することが重要です。
小学生に必要なのは、まず語彙の量を増やすことです。言葉の数をある程度知っていなければ文章が読めません。人に伝わる文章も書けません。また、限られた語彙で考えていると、思考の幅も狭くなるでしょう。このような意味で、言葉をたくさん知っていること、つまり語彙の量を増やすことは非常に重要です。
それと同時に、ただ言葉をたくさん知っているだけで文章を読む力、書く力、思考力が高まるかといえば、そうとも言えません。持っている語彙の質も高めていかなくては、本当に語彙力があるとは言えないのです。ですから、子どもたちの語彙力をつけるには、語彙の量を増やすことから始め、その後語彙の質を高めるような指導を行っていくことが大切です。
具体的な指導の話に入る前に、そもそも「語彙」とはどういう概念なのかということに触れておきたいと思います。言語学者の石黒圭は、語彙とは「意味のネットワークでつながる語のリスト」であると表現しています(『語彙力を鍛える』光文社新書)。ここで重要なのは、語彙とは単に知っている語の集まりなのではなく、「意味のネットワークでつながっている」ということです。
単なる語の集まりを語彙と呼ぶのであれば辞書は語彙に他ならないことになりますが、辞書のことを語彙と呼ぶ人はいませんね。あれは、五十音順に機械的に語が並べられているだけだからです。そういう機械的な語の集まりではなく、語彙とは意味のネットワークでつながっていることが欠かせない、ということです。
それでは、「意味のネットワークでつながっている」とは具体的にはどうなっていることを言うのでしょうか。小学生への指導を念頭に置いたとき、それは簡単に言えば語をバラバラに詰め込むのではなく、なるべく「類義語」と「対義語」でつなげていけばよいと私は考えています。
対義語を通して語彙指導をしていくことは、意味のネットワークを強化していく効果があります。「高い」の反対は「低い」、「戦争」の反対は「平和」などとセットで覚えていくことができるからです。
一方、類義語を通しての語彙指導は、語彙の量を増やすことができると同時に、語彙の質の向上をねらった指導もしやすいというメリットがあり、私は特に類義語を重要視しています。
例えば、「楽しい」の類義語として「おもしろい」や「うれしい」と挙げていくことで、これらをセットで覚えていくことができます。これは、語彙を増やす指導です。さらにそこから、「『楽しい』と『おもしろい』、『うれしい』ってどう使い分けたらいいかな。それぞれ例文を作ってごらん。」と子どもたちに伝え、例文を書かせて交流してみます。
こうした指導をしていくことで、「楽しい」「おもしろい」「うれしい」といった似た意味を持つ言葉を、微妙なニュアンスの違いなどで使い分けることができるようになっていくのです。類義語を通して語彙指導していくことは、語彙の量だけでなく質を高めることにもつながっていくのです。
語彙は、読むことや書くことの学習の中で日常的に指導することと並行して、体系的に整理された語彙をもとに、取り立てて指導することも効果的です。
類義語と対義語を通して言葉のネットワークを広げていく実践を紹介します。その名も「言葉ネット」です。人やものの様子を表す語、心情を表す語、思考を表す語など、子どもたちが文章を読んだり書いたりする際に高い頻度で使う語彙をテーマにすると、取り立て指導で得た知識を活用できる場面が多くなり、語彙の定着を図ることができます。言葉を広げていくときには、教科書の付録などに付いている語彙表も利用できます。
「言葉ネット」の手順例
できあがった「言葉ネット」の例
この活動を行うと、子どもたちの語彙の量を増やしていくことができるだけでなく、手順5によって語彙の質も高めていくことができます。初めはなかなか一人の力ではできませんが、手順4や5でグループやクラスでの協働的な活動を取り入れることで語彙を増やしたり、語彙の使い分けについて考えたりすることができるようになっていきます。
「語彙学習」というと、どこか一人で黙々と学ぶものというイメージがありますが、この「言葉ネット」では、友達の力も借りながら、ワイワイと楽しく語彙の量や質を高めていくことができるのです。
【参考文献】石黒圭『語彙力を鍛える』(光文社新書、2016年)、土居正博『2年生担任のための国語科指導法』(明治図書、2022年)